ドライジャック

フランスからの便り 2010~ : UPDATE /

チーズ店の友人と近々行くサンフランシスコ旅行の話をしていた。
フランスを始め、ヨーロッパのチーズに精通している人だが、アメリカのチーズというとぴんと来ないらしい。
「アメリカの、カリフォルニアのチーズってどんなのがあるの?」と聞かれ、「えーっと、モントレージャックなんか知られているよ」とは答えたものの、5年もカリフォルニアに住んでいたのにその味も特徴も覚えていない。

(*1)カウガール クリーマリー(CowGirl Creamery)
(*2)朝市

7年ほど前に大改装された、SFの新しいフードスポットビル内のショッピングアーケードにあるベイエリアで有名なパン屋アクメ ブレッド(Acme Bread)とこだわりチーズ屋カウガール クリーマリー(CowGirl Creamery)に寄ろう。 パンとチーズを買って、ベイブリッジをながめつつ、ベンチに座って食事をしてもいい。 朝市でタルトと新鮮フルーツを買って、朝ごはんというのもしゃれている。 平日の昼は近辺のビジネス街で働く人々がランチに訪れる。

モントレージャックの由来

モントレージャック別名ジャック、もしくはカリフォルニアジャックはカリフォルニアの歴史と密接にかかわっている。
モントレーはサンフランシスコの南、モントレー湾ぞいの町の名前で、チーズはその近辺の修道院で作られていたことから、こういう名前で呼ばれるようになった。
18世紀にスペインからメキシコを経て、カリフォルニアに宣教に来たフランシスコ会修道士がモントレージャックの元になるチーズを伝えたと言う。

もっとも、商業ベースに乗せられて広く流通する前は、「田舎のチーズ」’queso del pais’と呼ばれていた。
スコットランド出身の大地主デイヴィッド・ジャックス(David Jacks)が自前の酪農場でこのチーズを大量生産、販売して成功したので、ジャックチーズの名が広まった。

ではスペインが原産のチーズかというとそうではなく、元をたどれば、ローマ帝国、現在のイタリアで人気のあったチーズがローマ軍の進行とともに、マヨルカ島を経て、スペインに伝わったものだということがいくつかの研究で分かっているそうだ。

ドライジャック

今回取り上げるドライジャックはそんなモントレージャックの一つだ。
カリフォルニア ソノマ郡にある(*3)ヴェッラ チーズカンパニー(Vella Cheese Company)の18ヶ月熟成ドライジャック(商品名Special Select Dry Monterey Jack Cheese)をサンフランシスコ近郊の友人宅で食べた。
カリフォルニアのチーズもなかなかやるじゃないかと興奮してしまった。
後で調べたらこのチーズ製造者は近年アメリカ国内のコンペティションで賞をたくさん取っているようだ。

サンフランシスコ クロニクル紙(San Francisco Chronicle)のフードライター、ジャネット・フレッチャー(Janet Fletcher)もヴェッラ ドライジャック(Vella Dry Jack)を(*4)カリフォルニア チーズアイコン10の一つにあげている。

ドライジャック 写真のものは7-10ヶ月熟成のものと思われる
写真ソース:http://www.public-domain-image.com

 

ヴェッラ ドライジャック スペシャルリザーブ

ヴェッラのドライジャック

青みがかった黄金色で、熟成が進んだ18ヶ月もののドライジャックは、パルミジャーノのような食感。
それもそのはず、こんなエピソードも。
カリフォルニアにイタリア系の移民がたくさん入って、故郷で食べたパルミジャーノやグラナ・パダノチーズを懐かしんだ。
そこで、容易に手に入るローカルなジャックチーズを熟成させてみたら、似た感じのものができた。
もちろんイタリア系移民によく売れたと言うお話。

チェダー系ということだが、特徴的な刺激は後からかすかに来る感じで、ナッツの風味に加え、甘くてほんの少ししょっぱいフランス、ブルターニュ地方の塩バターキャラメルのような風味。
熟成期間の長いドライジャックはナイフを入れると、ボロッとくずれるが、かけらをつまんで食べる。食べる。食べる。なかなか止まらない。

印象的な黒い外皮は、ココア、黒胡椒、植物油をあわせたもの。
乾燥からくるひび割れなどを防ぎ、風味を与えるユニークな方法。

ワインとの組み合わせは、どこのワイナリーのものだったか、チーズと同じソノマのソーヴィニョン・ブランを飲んだ。
このチーズの産地と同じ、カリフォルニア、ソノマヴァレーのシャルドネー、ソーヴィニョン・ブラン、ピノ・グリをあわせてみてはどうだろう?
先にあげた「カリフォルニア チーズアイコン10」を書いたチーズライターのジャネット・フレッチャーはジンファンデルを薦めている。

モントレージャック(Monterey Jack)、カリフォルニアジャック(California Jack)、ジャック(Jack)、ペッパージャック(Pepper Jack)など、アメリカのチーズ売り場にはジャックの名のついたチーズがたくさん置いている。
これらは元は同じチェダー系のチーズで、大量生産されているものが多そうだ。
価格も安くサンドイッチに挟んだり、オムレツに入れたり、タコスなどのTex-Mex料理によく使われる。
良くも悪くも、印象に残らないチーズと言える。
今回取り上げたヴェッラ(Vella)のドライジャック スペシャルリザーブは1ポンド(約450g)当たり15ドルと決して安くはないものの、ワイングラス片手のくつろぎの時間を豊かにしてくれるチーズだ。
もちろんチーズおろしでおろして、スープやサラダにいれてもいい。

ドライジャック スペシャルリザーブ (商品名Special Select Dry Monterey Jack Cheese)
種類 ハードチーズ
産地 カリフォルニア ソノマ郡 ヴェッラ チーズカンパニー(Vella Cheese Company)
原料 牛乳(殺菌)
熟成 18ヶ月から24ヶ月
重さ 約3.4kg
凝固には植物性レンネットを使用

今回の訪米で、アメリカのチーズというと、ハンバーガーに挟まっているようなものしかないというのは古い偏見で、品ぞろえにこだわるチーズ屋はどこも成功しているという印象を持った。
サンフランシスコ ベイエリアはナパ、ソノマという、プレミアムワインの産地をそばに持つため、ワイン&チーズと言う食文化が広まっている。
ベイエリアのチーズ店、オーガニック系スーパーなどのチーズ売り場では、ヨーロッパ、特にフランス、イタリアからの輸入チーズを揃えているのはもちろん、下の写真にあるようにカリフォルニア、ウィスコンシンというアメリカ2大チーズ生産地のチーズが、店頭の一番目立つ場所に誇らしげに売られている。

カリフォルニア、ウィスコンシン産、その他のチーズ
商品名の下の黄色い四角の白抜き文字RとはRaw Milk 無殺菌乳のこと

脚注:

(*1)カウガール クリーマリー(COWGIRL CREAMERY CHEESE SHOP AT THE FERRY PLAZA)
 1 Ferry Building, #17
 San Francisco, CA 94111
 (415) 362-9354
 Fax (415) 362-9355
 Open 7 days a week
 Monday through Friday, 10am – 7pm
 Saturday, 8am – 6pm (open early for the Farmers Market)
 Sunday, 10am – 5pm
 カウガールクリーマリー Webサイト
 
(*2)フェリープラザの朝市
 Ferry Plaza Farmers Market (Embarcadero)
 Tuesdays: 10 a.m-2 p.m.
 Saturdays: 8 a.m.-2 p.m.
 Ferry Building
 1 Ferry Plaza
 415-291-3276
 
(*3)ヴェッラ チーズ カンパニー (Vella Cheese Company) Webサイト
 
(*4)「カリフォルニア チーズアイコン10」ジャネット・フレッチャー著
 10 iconic California cheeses by Janet Fletcher

五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。