チーズのある風景 ~カリフォルニア暮らしより~

アメリカからの便り 2012~ : UPDATE /

はじめに

”Enjoy the rain !”
いつだったか、私の聖歌隊仲間のジャネットが歌うように言ったひとことです。
雨が少ないカリフォルニアならでは、の発言とも言えますが、この”Enjoy”が私の生活のキーワードとなりました。

「こんなにアメリカの生活に溶け込んでる人、初めてみましたよ」と周りの方々から言われ続けた、とても濃い3年2ヶ月のアメリカ・シリコンバレーでの生活を終え、日本に帰国したのは今年の1月末のこと。
まだ4歳になったばかりの息子と8ヶ月の娘を抱えてスタートしたアメリカ生活は、小さい子どもたちがいるからこそ、の楽しさに満ちていました。
日本に帰って、改めて文化や気質の違いを感じる今、「チーズ」をキーワードに、カリフォルニア暮らしについてお話したいと思っています。

秋のカリフォルニア

からりとした青空のイメージが強いカリフォルニアですが、通常11月から3月ごろの冬の間は雨季になります。
朝から濃い霧が立ち込め、毎日しとしとと雨が降ったり、稀に小さい嵐が来てちょっと憂鬱にもなりますが、それでも晴れると真冬でも長袖Tシャツ1枚でもいいかしらと思うぐらいの暖かさです。
日差しが強いからか、植物がびっくりするほど成長するこの土地では街路樹や庭木も立派です。
降雨量が少なかった昨年の秋は長い間街中の紅葉を楽しむことができました。

子どもの学校の送り迎えもこんな日には徒歩で。見事な紅葉の並木が続きます

食べて食べて、詰め込んで…

この季節といえば、10月末のハロウィンに始まり、年末のクリスマスに向けて、ひたすらおやつやごちそうを食べ続けることになります。
11月第4木曜日のサンクスギビング(感謝祭)と12月のクリスマスは、たった約1ヶ月の間にお盆とお正月が来るようなものですから、ごちそうを作る方も食べる方も大変。
太ったとぼやく私に友人は「仕方ないわよ。この季節はみんな2~3ポンド(1~2.5kg)ぐらいは太っちゃうのが普通よ」と慰めて(?)くれました。
ここで「そうよね。ホリデーシーズンだもんね」と開き直ってしまうのが私の悪いところです。

この時期盛り上がる話題のひとつが「ターキー(七面鳥)をどう料理するか」ということ。
日本ではあまりなじみのないターキー肉ですが、高タンパク、低脂肪でヘルシーとされているのもあって、アメリカでは日頃から実にポピュラーな食べ物です。
伝統的な調理法はパンの角切りと香味野菜をじんわりとスープで炒めたスタッフィング(詰め物)をお腹に詰めてオーブンでローストする方法。
その他にもスモークしたり、詰め物なしで焼いたり、油で揚げたり、いろいろな方法があります。
友人の一人は「真ん中にコーン(円錐状の金属容器)を入れてバーベキューでじっくりと焼くのが一番だよ」と言っていました。
私も何度か調理してみましたが、まず巨大なこと、独特のターキー臭がすることに驚きました。
一抱えもあるターキーにまんべんなくオイルや香味野菜を塗り、何時間もかけて焼くのですが、最初に生のターキー(もちろん頭と足は落としてきれいにしてあります)のお尻に手を入れて、首づると袋に入ったギブレッツ(臓物)を付けあわせのグレービーソース作成のために引っぱり出さなければなりません。

ようやく出来上がってグレービーやクランベリーソースと一緒にディナーでたらふく食べた後も、大抵の家庭ではしつこくターキーが残っています。
当分の間ターキーサンドイッチやターキーサラダ、ターキースープなどと食べ続けていると、もううんざり、といった気分になるものです。

関連サイト:
http://allrecipes.com/recipes/holidays-and-events/thanksgiving/turkey/

筆者が作ったサンクスギビングディナー。


この時はちょっとアジア風にチャーハンを詰めて、この季節にお馴染みのブリュッセルスプラウト(芽キャベツ)を付け合わせにしました。
キャンディード・ヤム(オレンジ色のもの。スイートポテトをブラウンシュガーとバターでソテーしてあります)も代表的な付け合せのひとつ。
デザートはパンプキンパイとティラミス。

ターキーといえば、それをローストするには不可欠な大きなオーブンがほとんどの家庭のキッチンに作り付けられています。
私の住んでいた家にも上下二段、つまり2つのオーブンがあって重宝しました。
サンクスギビング、またはクリスマスに調理するターキーの平均的な重さは約15ポンド(約7kg:全米七面鳥連盟調べ)と言われていますから、それが入るオーブンと言うとどんなに大きいかがご想像いただけるでしょう。

参考サイト:
http://www.history.com/topics/thanksgiving-facts

パーティーの多いアメリカでは、もちろんターキーを焼く時以外にも、この大きなオーブンを駆使して様々なごちそうを作ります。
ポークの片腹分そのままのポークバックリブや子羊の脚まるごとのレッグ・オブ・ラム、一抱えもある大きなハムの塊など、迫力あるメインディッシュはもちろん、付け合わせの野菜も一緒にオーブンに入れれば後は楽ちんです。

農場で大きな七面鳥たちに見入る子どもたち

これを食べれば大丈夫?!

ボリュームたっぷりのメイン料理にはサラダが欲しくなるもの。
何でも便利にしないと気が済まないアメリカのマーケットではサラダ野菜も<洗浄、カット済みで袋から出したら即食べられます>というものが何種類も売られています。
日本でもベビーリーフミックスなどが購入できますが、細切りにんじん入り、ハーブの新芽が入っているスプリングミックス、色とりどりのエディブルフラワーが入ったもの、ほうれん草ばかりたくさん入っているものなど、用途に合わせて手軽に選ぶことができます。
ご当地名産のナッツ類やカッテージチーズ、フェタ、モッツァレラ、などのチーズ、アボカド、オリーブ、ドライフルーツなどをトッピングするとカリフォルニアらしい、鮮やかで美味しいサラダになります。
生野菜をたんまり食べると何だかこれで大丈夫、という気になってまたデザートまでたくさん食べてしまうのですが、オリーブオイルたっぷりのドレッシングがたくさんかかっているので本当のところは思っているよりもカロリーが高いような気もします。
私のお気に入りの市販のドレッシングにクランベリーとくるみ、ゴルゴンゾーラ入りのものがありましたが、パステルピンクのドレッシングの色と香りがいかにも食欲をそそるものでした。

ディナーの仕上げもしっかりと

サンクスギビングのデザートとして欠かせないのがパンプキンパイとペカンパイです。
後者はペカンナッツとコーンシロップで作ったこってり甘いパイ。
毎年作ろうと思いながら、残念ながらついぞ作りそびれてしまいました。
一方、比較的シンプルなパンプキンパイはレシピを少しずつ変えたりしながら毎年作っていました。
生のパイ・パンプキン(そういうパイ用の品種があるのです)から作る方法もありますが、一般的なのは缶詰のペーストから作る方法です。
毎年この季節になると1缶1ドルぐらいで山積みになっていますから、それを買ってきてコンデンスミルク1缶と卵、「パンプキンミックス」と書かれたスパイス(一般的にナツメグ、ジンジャー、シナモン、クローブから出来ています)を混ぜて市販のパイ生地に流し入れて焼くのが最も簡単で一般的な作り方です。

ここでは昨年作って好評だった、クリームチーズ入りの<パンプキンチーズパイ>をご紹介しますが、その前にクリームチーズといえば、ちょっと思い出すことがあります。
何でも「たっぷり」が大好きなアメリカではたんまり使う(食べる)罪滅ぼしに(?)低カロリーやローファットという種類がなんにでも必ずと言っていいほどあり、クリームチーズも例外ではありません。
棚にずらりと並んだクリームチーズ(一箱2ドルぐらい)にも、たいていのお店ではオリジナル、脂肪分1/3(『ヌフシャテル』と表示されていることがよくありますが、フレンチチーズのヌフシャテルとは別物)、脂肪分なし、の三種類がありました。
一度のレシピに何箱も使う時には深く考えず、「脂肪分なし」や「脂肪分1/3」を買うこともありましたが、熱を加えた時のクリーミーな舌触りのためには、太ることも覚悟でオリジナルを使うべきだと経験から知りました。
幸か不幸か、日本ではそれほど迷うこともありませんので、ぜひ普通の「クリームチーズ」をひと箱手に入れて、パンプキンチーズパイで、アメリカの秋の香りをお楽しみください。
かぼちゃは普通の日本のかぼちゃ、スパイスはあれば、で大丈夫です。

参考サイト:
 http://ja.wikipedia.org/wiki/クリームチーズ
 http://en.wikipedia.org/wiki/Neufchâtel_(cheese)

パンプキンチーズパイ

(直径9.5インチタルト型1個分)
材料:
パイ生地

薄力粉150g
バター75g
約大さじ4(様子を見ながら調整する)

フィリング

かぼちゃ450g(約1/2個分)
砂糖70g
(ブラウンシュガーや黒糖ならコクのある仕上がりになる)
2個
生クリーム100cc
スパイスまとめて小さじ1杯分
(クローブ、ナツメグ、シナモン、ジンジャー)
クリームチーズ1箱(200g)
グラニュー糖65g
1個
バニラエッセンス適宜
薄力粉大さじ1


作り方:
1.まず型に分量外のバターまたはマーガリンを塗り、薄力粉をはたいておく。
2.ボールに薄力粉を入れ、その中に置いた冷たいバターをスケッパーかフォークで
  粉をまぶしながら細かく切って、粒状にしていく。
3.水を少しずつ加え、ゴムベラで混ぜる。最後に手でひとまとまりにしたら、
  平べったいボール状にしてラップでくるんで冷蔵庫で30分以上寝かせる。
4.打ち粉をしてめん棒で薄く伸ばし、型に敷き詰め、180℃のオーブンで15分焼き、
  膨れた分は手で抑えて冷ましておく。

5.かぼちゃは種と皮を取り除いてから小さく切って、レンジで約5分加熱して
  柔らかくする。熱いうちにフォークでつぶしておく。
6.砂糖(今回使ったのはブラウンシュガー)を加え、木べらで混ぜる。
7.卵2個を一つずつ加え、混ぜる。
8.生クリームを加え、スパイスも加えてさらに混ぜる。

9.室温にもどしたクリームチーズを泡だて器でクリーム状に練り、
  グラニュー糖を加えてよく混ぜる。
10.卵1個、バニラを加え、さらに混ぜる。最後に茶こしで薄力粉をふるい
  入れながらよく混ぜる。
11.クリームチーズのフィリング(10)の半量を空焼きしたパイの上に平らに入れる。
12.クリームチーズフィリングの残りをかぼちゃクリーム(8)によく混ぜて、
  (11)のチーズクリームの上に入れて、190度のオーブンで45分間焼く。
13.粗熱がとれてから冷蔵庫で冷やす。お好みでホイップクリームを添えてどうぞ!

出来上がったパンプキンチーズパイとアメリカのパンプキンパイ用スパイス、パンプキンペーストの缶詰。
西川久美子

本職はピアノ弾き。3年2ヶ月の米国カリフォルニア州サンノゼ暮らしを経て、現在関西在住。 夫、息子、娘との4人ぐらし。趣味は歌、ズンバ、ピラティス、お菓子作り。