初夏のSaint-Tropez Vol. 2 後の祭り

フランスからの便り 2010~ : UPDATE /

パリも30度を超える夏日が続き、焼けたフライパンのようなアスファルトの歩道を赤い顔をして歩いている人をよく見かけます。
日本人はこれくらいへっちゃらと言いたいところですが、オフィスビルなどを除き、パリの建物にはクーラーが普及しておらず、暑さ対策がよく話題にのぼります。
朝と夜の気温差があるので、夜の涼しいうちは窓を開けて部屋に涼気を取り込み、朝日が昇ったら、雨戸を閉めて、暑い空気を入れないようにするのが一般的です。

先週、頭痛と花粉症がひどくて、ヴェトナム系フランス人の鍼灸師の所へ行きました。
オスマン様式の旧建築のアパートが診療室で、濃い紅のビロードのカーテンが窓辺を彩り、香がたかれた室内で治療を受けました。
やはり暑さ対策に雨戸を閉めた室内はほの暗く、雨戸の桟から細い筋になって夏の光が入ります。
「ラ・マン」という映画で華僑の青年とフランス人少女が愛し合った、外の喧騒と対比するような静謐な部屋のようでした。
そんなことを思いながら、手や足のツボに刺さった鍼を見つつ、静かなオリエンタル風調度を眺めつつしながら、リラックスしていったのでした。

前回のコラムではサン・トロペのインドテーマパーティのことをお伝えしました。
その翌日、まさに「後の祭り」のブランチパーティやサントロペの名物店のことなどを今回のコラムでは取り上げたいと思います。
後の祭りですが、祭りの次の日の意味のほうで全く悔いはありません。

6月20日(日) 9:00AM

突風が吹いたインドパーティの翌日は雲ひとつない青空。
朝は荷物をまとめ、お昼からのブランチパーティの後、直接空港へ向かえるように準備をします。
3階建てのアパートの3階に義理の両親の休暇用アパートがあります。
寝室二つの小さなところなので、大人4人までしか寝るスペースがありません。
今回は夫婦二人だけで来たこともあり、初めてそこへ滞在しています。
下の写真のようにアパートの屋上がそのままテラスになっています。
テラスで食事を取れるよう、流し台、食器洗い機、小さな冷蔵庫、テーブル、椅子などを完備しているのです。

さて、テラスの長椅子に寝そべって陽にあたっていると、体が奥から暖まってくる感じでなんとも言えずいい気持ちです。
亀がお日様に甲羅を干すのも分かるなあ。
そのうちサン・トロペの名物老舗セネキエ(Senequier)(*1)へ朝食のブリオーシュ・オゥ・シュークル(つぶつぶの砂糖がけのブリオーシュ)を買いにいった夫が戻ってきました。
夫の両親とその友人夫婦と朝食にします。
セネキエは創業120年以上を誇るパティスリー、カフェ、ティーハウスです。
シーズン中はあまりのお客さんの多さに、空いているテーブルを見つけて、ウェイターさんを捕まえて注文するのに一苦労するほどです。



真っ赤なテーブルと椅子のセネキエ
カフェの入り口とは反対側にケーキショップの入り口がある
写真右手 ブリオーシュ・オゥ・シュークルとトースト ブリオーシュはふわっと軽い口当たりで、オレンジの花の香り

 



サン・トロペ名物 タルト・トロペジエンヌ(Tarte Tropezienne)
ブリオーシュの生地を大きく焼いたものにクリームがサンドイッチ
日本人にはなんとなくなつかしい味

13:00PM ブランチパーティ

パンプローヌ(Pampelonne)のアクアクラブ(Aqua Club)(*2)にて

直射日光を柔らかくさえぎる白いパラソルの下、プライベートビーチが目前のテラスレストランでブランチパーティです。
遅く起きる週末に、BreakfastとLunch、朝昼兼用の食事を取る習慣をブランチ(Brunch)といいますが、フランスではこれが大流行りです。
ホテルやレストランで日曜日にブランチメニューを出す店が増えています。
今回のブランチパーティは、時間もブランチというよりはランチ、食べるものも、朝ごはん的なものが無視され完全にランチですが、「海辺のブランチパーティ」という響きが優先です。

頭の上に空 目の前に海 一番の贅沢

この週末の3回目の最後のパーティで、3個目のバーズデーケーキのろうそくを吹き消したフィリップと奥様のアダの笑顔は、この3日間にわたる大イベントを成功させてホッとしたようでもありました。
還暦祝いで3日続きのパーティとはなんとも豪勢です。
一年ほども前から準備をして、みんなを楽しませて自分も思いっきり楽しむという還暦の祝い方です。



コート・ド・プロヴァンスの白とロゼ
太陽の下でのパーティの飲み物

前夜祭の白い服のディナーではペタンクに挑戦したり、ラテンを踊りました。
マハラジャ時代のテーマパーティで、初めてインドの伝統衣装を着ることができました。
最後にビーチレストランでたっぷり南の陽光を浴び、おいしいロゼも少しいただいて招待客は皆いい気分です。

「夢のような3日間をありがとうございました」とフィリップにお礼を言いましたら、「あなたがくれる友情と同じくらいのものをお返しできていたら。」と素敵なコトバが返されました。



初夏の海辺のパーティは冷たい食事
手前からサーモンの冷製、イイダコのサラダ、キューブに切ったコウイカのサラダ、赤ピーマンのマリネ

ブランチパーティのチーズ

大人数のビュッフェパーティには種類は少なく、大きなチーズを出すと用意する側も食べ物を取りに行く招待客にも便利でいいようです。
ビュッフェはどうしても、おかずを何種類もお皿にたっぷり盛ってしまうから、おなかがいっぱいになってしまい、食事のしめくくりのチーズをたくさん食べる人はあまりいないかもしれません。

2種類の場合だと、味の強弱や見た目、色の違い、クリミーなものと硬いものとか、コントラストを付けるのがいいようです。
右のロックフォールクリームはロックフォール+生クリームを混ぜるだけで簡単にできるようです。

7月始めから学校も休みに入りました。
ひと月ほども前から、周りのフランス人は会えば、Vous partez en vacances bien-tot ?(もうすぐバカンスに発つの?)が合言葉です。
この時期フランス人の頭の中は半分バカンスが占めているから、みな上機嫌で対人関係もぐっとよくなる(?)ありがたい時期でもあります。
この夏、プロヴァンス、コート・ダジュールで過ごす日々で、見たことのない地元産チーズに出会えるか期待しながら、Bonnes Vacances !

脚注:
(*1)Senequier セネキエ

 アーモンド、ピスタチオとプロヴァンスの蜂蜜を使った柔らかいヌガーもとても有名
 数日間、日持ちもするので、サン・トロペからのお土産にも
 http://www.senequier.com/
 
(*2)アクア クラブ プライベートビーチ、レストラン
 Aqua Club
 Route de l’Epi
 Ramatuelle
 Telephone : 04 94 79 84 35
 http://www.aperorestodisco.com/restaurant-saint-tropez-3150-aqua-club.html

五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。