早春の楽しみ ~カリフォルニア暮らしより~

アメリカからの便り 2012~ : UPDATE /

春を告げる行事たち

2月半ば、バレンタインデーを過ぎると日本ではひな祭りの飾り付けが見られるようになりますね。
もちろんアメリカにはひな祭りはありませんが、別の楽しい春の行事があれこれ見られます。

アジア系移民の多いカリフォルニア、殊にシリコンバレーではチャイニーズ・ニューイヤー(旧暦のお正月のこと。中国語では『春節』と表記される)があちこちで祝われます。
有名なサンフランシスコの中華街をはじめ、住宅街でも中華系のお宅の玄関先には赤や金色のお正月飾りがあって賑やかです。

参考サイト:サンフランシスコチャイナタウンの春節パレードの公式サイト

2月下旬のサンノゼの風景。年にもよりますが、比較的温暖な土地なのでこの季節でもこのとおり。
桜やアーモンドの花がもうあちこちで咲き始めます。

緑のお祭り セントパトリックスデー

3月17日にはアイルランド系のお祭りであるセントパトリックスデーがあります。
アイルランド移民が多い東海岸ほど盛大ではありませんが、それでもシンボルの、シャムロックと呼ばれる三つ葉のクローバーやカタバミの葉の色を模した鮮やかな小物やお菓子がお店に並び、アイルランド料理だというアイリッシュソーダブレッドやアイリッシュビール、コーンドビーフとキャベツの煮物(いわゆる缶詰のコンビーフとはかなり違った、塩漬けの大きな牛肉の塊を使う)を食べたりして楽しく祝います。
殊に子どもたちはこの日「緑色の物を身につけて行かないとつねられる」というお約束があるので、みんなどこかしら緑色の装いで、なかなか面白い日です。
また小学校ではこの日のもうひとつのシンボルである、緑色の服を着た大金持ちの妖精・レプリコーンを捕まえるための仕掛けを作るのが宿題になったりします。

参考サイト:セントパトリックスデー(聖パトリックの祝日)

我が家で作ったコーンドビーフとキャベツの煮物

エッグハントで大騒ぎ

さて、春の一大イベントといえばイースター(復活祭)を抜きにはできません。
日本でも卵やウサギの形のチョコレートなどで少しは知られていますが、同じキリスト教のお祭りであるクリスマスに比べると認知度はかなり低いといえるでしょう。
一方、キリスト教が主な宗教である欧米では、十字架に磔になって亡くなったイエスキリストが復活したことを祝う復活祭も、その誕生を祝うクリスマスと同じか、それよりも大きな喜びとして捉えます。
現在のアメリカでは宗教色もかなり薄れているように思いますが、それでも大きなイベントであることに違いありません。

このイースターの日は年によって変動します。
その日を決める定義が「春分の日から初めての満月を迎えた直後の日曜日」なので、年ごとに3月下旬から4月下旬にかけて、約1ヶ月もの差があります。
春分の日や満月が絡むあたり、純粋なキリスト教というよりどこかしら土着の宗教と混じったようなユニークな感じがします。
実際調べてみますともともとはゲルマン神話の春の祭りの影響が色濃く、そこからシンボルのウサギや卵も由来しているようです。

参考サイト:「復活祭」

キリスト教の教会ではイースターを迎えるにあたってその46日前からいろいろと行事が始まり、この日に向けて準備が始まるわけですが、今回はそれはさておき、一般的なイースターのお話です。
イースターのお楽しみといえば、何と言っても子どもたちのエッグハント(卵さがし)。
学校、各家庭、施設、公園などいろんな場所でこの時期はエッグハントが行われます。
学校では「ゆでたまごを1ダース持ってくるように」なんていう親への宿題もでたりで、市場では卵が大安売りです。
このゆでたまごを食用色素などで染めたり、思い思いの絵を描いたりして飾るのもまた子どもたちのお楽しみ。
ただしうっかり茹でる時に卵の殻にひびが入っていると、染料が中まで染みて、青や緑のちょっと薄気味悪い卵を食べる羽目になります。

プリスクールのおやつの時間もエッグハントの日はこんな可愛いレイアウトで。

昔ながらの本物の卵もいいのですが、あとで来る日も来る日もゆでたまごばかり食べるのはちょっと大変。
というわけで近年主流のエッグハント、特に大規模なものではもっぱらプラスチックのカラフルなケースにキャンディをつめた物で行われます。
中に入れるのはキャンディ、チョコレートなどのお菓子の他、小さなおもちゃ、くじ(あとで商品と引き替える)など何でもいいのです。
パステルカラーの思い思いのイースターバスケットを持った子どもたちは「用意ドン!」の合図で目を輝かせて我先にお宝を拾い集めに走りだし、卵争奪戦はあっという間に終了します。
プラスチックのケースに景品を詰めるのも、いろんなところに隠すのも大人にとってなかなか楽しいものですし、子どもにとっては無論、またとない楽しみなのです。

色鮮やかなプラスチックの卵たち

イースターのご馳走

イースターもご馳走が楽しみな祭日です。
特に決まっているわけでもないのですが、この日は大きな骨付きハムでお祝いすることが多いです。
ブタの大腿部をそのままスモークした、5kgほどもあるような大きなハムの塊が食卓にどんと陣取っているとなかなか迫力があります。
ハムのいいところは何と言っても調理が簡単というところ。
「調理済み」と書かれたものはもちろんそのまま食べても美味ですし、クローブなどの香辛料と一緒に、またはシナモンやはちみつなどのグレーズをかけて、まるごとオーブンで温める方法もあります。
写真を見てお分かりだと思いますが、スパイラルカットと言って、骨を中心に螺旋状にあらかじめカットしてあるので扱いも簡単です。

参考サイト:About.comより「調理済みハムを過熱して美味しく食べる方法」

有名なHoneybaked Ham。その名の通りはちみつがたっぷりとかかっている

ベーコン&チーズ入りデビルドエッグ

メインのハムの他にはぜひイースターらしいパステルカラーや鮮やかな色のお料理を用意したいものです。
今回ご紹介するデビルドエッグはイースターのテーマである「再生」「復活」を象徴する卵をそのまま使っていますから、まさにうってつけです。
見た目も可愛らしく、材料も安価、作るのも簡単とあって、普段からパーティーには非常に人気のあるこの一品にここでははチーズが加わり、さらに美味しさが増しています。

今回使ったチーズはレッドチェダーとペッパージャック。
チェダーはアメリカで非常に一般的に食べられるチーズのひとつで、オレンジ色のため卵の黄身と同化してほとんど見えなくなりますが、コクをプラスしてくれるので美味しさが倍増します。
一方ペッパージャックはアメリカ生まれのモントレージャックにレッドペッパーやハラペーニョなどをプラスしたピリ辛チーズです。
カリフォルニアのモントレーでジャック修道士が作ったといわれるモントレージャックチーズはクセがなく、大変食べやすいチーズですが、そこに香辛料が入って刺激的なおいしさになっています。
その他にもブルーチーズなど、お好みのチーズを混ぜればまた一味違ったおいしいデビルドエッグを作ることができるでしょう。
とてもお手軽なレシピですが、意外なほど見た目も素敵なデビルドエッグ。
アメリカで人気なのも納得です。作れば食卓に楽しい花が咲くのではないでしょうか。

ベーコン&チーズ入りデビルドエッグ。アメリカではデビルドエッグを盛り付けるため
(運ぶため)の、たくさんのくぼみがついた専用のお皿も様々な材質や意匠で出ていて楽しい。
5個(固茹でにしておく)
マヨネーズ 大さじ3強
ベーコン 2枚
レッドチェダーチーズまたはペッパージャックチーズなど、お好みのチーズ 大さじ1(細かく刻んでおく)
マスタード 小さじ1

作り方:
1.固茹でにした卵の殻を剥き、縦半分に切って、黄身だけ別に取り分けておく。
2.ベーコンは中火でカリカリに炒め、細かく砕いておく。
3.取り分けておいた卵の黄身、マヨネーズ、ベーコン、刻んだチーズをフォークでつぶしながらながら混ぜる。
  さらにマスタードも加え混ぜる。
4.卵の白身のカップに③をスプーンで盛り付ける。
  ひと手間かけて絞り出し袋を使用するとパーティーらしく華やかに。
*お好みで粒コショウやパプリカなどのスパイスやディルやあさつきなどハーブのトッピングでアレンジを楽しむのもいいですね。

西川久美子

本職はピアノ弾き。3年2ヶ月の米国カリフォルニア州サンノゼ暮らしを経て、現在関西在住。 夫、息子、娘との4人ぐらし。趣味は歌、ズンバ、ピラティス、お菓子作り。