フランスの5月の祝祭日

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2016年のゴールデンウィークは10連休で旅行に出かけられた方も多いと思いますが、実はフランスも5月に連休があるのをご存知でしょうか。月初めの1日はメーデーでした。この日、フランスでは日ごろお世話になる人にスズランを贈る習慣があります。路上でも花屋でもスズランの小さな花束が売られます。スズランは姿がかわいらしい花ですが、爽やかで品のよい香りが、切り花になっても数日持続することをフランスに来て知りました。そういえば香水にもディオリッシモなど、スズランの香りをイメージしたものがありますね。

この日は誰でも路上でスズランを売って良い
この日は誰でも路上でスズランを売って良い

5日の木曜日はL’Ascension(ラソンション)と言ってキリスト昇天祭です。復活祭から5週目の木曜日、つまり復活祭から40日後が昇天祭だそうですが、毎年日が変わる移動祝日なので4月も終わりになると、今年の5月のラソンションはいつかな?とカレンダーを確認するわけです。8日は「1945年5月8日戦勝記念日」で、西ヨーロッパでは第二次世界大戦終結記念日です。16日月曜日は「聖霊降臨祭の翌日の月曜日」という長い名前の祝日で、15日日曜日にある祝日聖霊降臨祭の翌日の月曜日が、キリスト教の伝統に則って祝日となっています。

フランスの祝祭日

フランスの祝祭日*1は11あって、そのうち6つがキリスト教の伝統から来ています。
昇天祭 L’Ascension も聖霊降臨祭 Pentecôte もキリスト教に即した祝日で、年間11ある祝日のうち、クリスマスも入れると半分以上がキリスト教の伝統に則った祝日です。宗教関連の祝祭日は、復活祭のイースターとクリスマス以外は信仰心の篤い人でない限り、由来を詳しく知らない人が多いようです。元旦と先に挙げたメーデー以外のあと3つはどんな祝日かというと、戦争と革命関連です。先に挙げた1945年5月8日戦勝記念日、7月14日の革命記念日(日本ではパリ祭として有名)、そして11月11日のArmistice — 1918年休戦記念日です。11ある祝祭日のうち、4つが固まる5月は、今年の場合4連休の週末の翌週末にまた3連休と、気分は日本のゴールデンウィークといったところです。

*1在日フランス大使館 フランスの祝祭・伝統

パリでも花見をする?

 

ソー公園の八重桜
ソー公園の八重桜

桜のことをCerisiers(スリジエ)と言いますが、日本人が意識する以上にフランス人にとっての日本のイメージは「桜」です。そういえば、少し前にフランス人の友人からプレゼントされた紅茶もマリアージュ・フレールの「サクラブルーティ」でした。これは桜の花の香りが青茶(中国茶の一種)に移されており、かすかに桜の花びらの塩漬けのような香りのするお茶です。

パリの郊外にソー公園(Parc des Sceaux)という181ヘクタールもある広大な公園があります。パリの日本人なら誰でも知っている桜の名所です。白っぽい一重咲きの桜もありますが、ここでのスターは八重桜です。4月の中旬から末まで楽しめるそうですが、この時期ソー公園の桜は咲いたかとソワソワするパリ在住の日本人は少なくありません。ネットには開花情報も飛び交います。私はと言うと、先月パリに来て12年たって初めてソー公園を訪れました。4月中旬の肌寒い日曜日でしたが、花見をしている家族、友人連れがたくさんいました。桜のそばで太鼓ミニコンサートもやっており、こちらも大盛況。花見という習慣、もしかしたら、世界に広まるんじゃないでしょうか。花見客は日本人、アジア人が多かったですが、フランス人も多くいました。中には、日本のアニメのコスプレのグループもいて、どういう経路(笑)で花見の習慣を知ったのか、分かりやすい!余談ですが、フランス人の若者がアニメのコスプレをすると、似合う!パリジェンヌらしく細身で、キュートな顔立ちの女の子や細面で美形の男の子達が多いから、驚くには当たらないけれど。桜の花の下でおにぎりをほおばるフランス人と言うのが当たり前の光景になるかもしれないと、子供のお友達のマンガ好きパーセンテージを見ても思います。

4月にパリの街を歩くと、意外とよく桜を見かけます。ノートルダム大聖堂のそばにも桜が植えられていて、晴れた日にシテ島から散歩をしつつ、ゴシックの大聖堂を背景とした八重桜を眺めるのもいいものです。また5区の植物園(Jardin des plantes)*2の巨木の八重咲きの白い桜は「白妙(しろたえ)」という品種だそうで、植物園を開花時期に訪れる人は、誰でも吸い寄せられるようにこの桜に近づきます。他にも里桜や寒山桜など植えられており、木の根元には植物園らしく”Kanzan”などど刻まれたプレートが置かれています。

*2
パリ植物園 Jardin des Plantes
 57 rue Cuvier 75005 Paris
 メトロ最寄駅:5番線、10番線、RER C線 Gare d’Austerlitz 駅
 7番線 Censier Daubenton駅 7番線、10番線 Jussieu

立食ホームパーティの一品にチーズ

 

立食パーティのチーズプレート 左から時計回りに ブリー・ド・モー、クラクビトゥ(Clacbitou)、グリュイエール、黒胡椒入りペコリーノ
立食パーティのチーズプレート
左から時計回りに
ブリー・ド・モー、クラクビトゥ(Clacbitou)、
グリュイエール、黒胡椒入りペコリーノ

フランス人はホームパーティが大好きというより、人付き合いの一部で習慣だと気がついたのはいつのことだったか。自称めんどうくさがりで日本人の私でさえ、月に一度は誰かを家に呼んでいますし、もっと社交好きの人は毎週のように人を招いています。テーブルでの食事が無理な人数の時は、迷わず立食形式を取り入れます。とはいえ、天井の低いアパルトマンで立って食べるのはあまり快適ではないので、食卓テーブルにつく人、ソファーに腰掛けて膝にお皿を乗せて食べる人、台所のテーブルで食べる人がいて、、、ということになります。招く側は段取りとタイミングを考えないといけませんが、招かれる側はずっと座っていなくて良いし、いろんな招待客と話ができて気楽です。こういう食事の場合でも、うま味がしっかりとあり、腹持ちのいいチーズは便利です。写真のように、前もって切り分けたものを皿に盛り、ラップをかけて冷蔵庫に入れておき、そろそろメインの食事が終わるかというタイミングで、テーブルに置くだけ。

田舎の家の近くの街クロミエ(Coulommiers)の中心に Ferme de Jehan de Brie *3という昔ながらのチーズ店があり、クロミエ、ブリーなど地元産のチーズに加え、イギリスやイタリアの物もあり、品揃えがいいので、クロミエのマルシェに行く時は必ず寄っています。先日のホームパーティのチーズもこの店で買いました。ブリーがおいしいのはもちろん、ペコリーノやグリュイエールにもたちまち人の手が伸びてほぼ空になった皿を下げながら、チーズのチョイスも良かったかなと一人笑みを浮かべて自画自賛したりして。

時計の12時のところにおいたチーズはクラクビトゥ(Clacbitou)というシェーブルです。形がシャロレ(Charolais)というシェーブルに似ているので、味も似ているのではと思いトライしてみました。調べてみるとシャロレとクラビクトゥは双子のようなチーズでした。「クラクビトゥ」と名前が付いているものは特に無殺菌の山羊乳製で、フェルミエ(農家製)であることを示すために La Racotière *4というこのチーズの製造元の会社が名付けたようです。ミルクの風味と塩味、酸味、甘味が上品なバランスを保ち、コクもある極上シェーブルを機会があれば是非召し上がってほしいです。

*3 Ferme de Jehan de Brie 15 Place du Marché,
 77120 Coulommiers, France
*4 Clabitou.com(仏語のみ)

品名 クラクビトゥ
原産地 ブルゴーニュ
大きさ 直径6〜7cm、高さ7〜8cm、250〜310g
脂肪分 45%
熟成期間 10~12週間
タイプ シェーブル
原料乳 山羊乳(無殺菌)

工場跡地を利用した屋内マルシェ

田舎の家の近くのドゥ(Doue)という村のはずれに金、土の夕方だけ開かれる、工場の跡地を利用した屋内マルシェがあります。お店は野菜と果物を商うお店とチーズ屋とハム、ソーセージなどの豚肉の加工食品店の3つだけ。たったそれだけなのですが、地元の人になかなか人気があります。理由はメインの野菜と果物の店で、品物の鮮度が良く、値段も妥当だからです。5月のフランスはアスパラガスが旬ですが、安い野菜ではありません。しかしこの店ではグリーンも白も切り口の瑞々しい新鮮なものが、パリで買うよりも安い。パリと地方は全く物価が違うんですね。チーズスタンドも、平日はこの地方の幾つかのマルシェに出店しているだけあって、基本的なものが揃っていますし、パリのチーズ店よりも若干求めやすい値段です。クロミエもそうですが、ここの辺り一帯は Pays de Brie(直訳するとブリーの国だが、ブリー地方といった意味)と呼ばれているブリーの本場ですので、このチーズスタンドを広く占領しているのも、下の写真2枚のような、ブリーの仲間のチーズです。

上 ブリー・ド・モー、中央ブリア・サヴァラン、下Melunとあるのは、ブリー・ド・ムラン
上 ブリー・ド・モー、中央ブリア・サヴァラン、
下 Melunとあるのは、ブリー・ド・ムラン

 

左 グラン・シャテルLe Grand Chatel 右 ブリー・ド・ナンジー
左 グラン・シャテル(Le Grand Chatel)、右 ブリー・ド・ナンジー

エポワスとミニチュアエポワス

このチーズスタンドで店主と会話を交わしたり、チーズ屋にしかない小規模の乳業会社のヨーグルトを買ったりしながら、なんとなしにいろんなチーズを眺めているとエポワスの隣に、小さいウォッシュチーズを見つけました。「これはどんなチーズですか」と店主に聞くと、「エポワスの小さいのだよ」とのこと。今までこんなかわいいサイズのエポワスには気がつかなかったと思いつつ、このコラムのことが頭に浮かびました。私はウォッシュが苦手だったため、今まであまりコラムでも取り上げていないことにも思い至りました。当然、お買い上げです!

1週間後に普通サイズのエポワスも買ったので、今回のコラムの締めくくりにこのエポワスとミニチュアエポワスにも触れようと思います。

左下 ル・トルゥ・デュ・クリュLe Trou du Cru、右下 エポワス、上左リヴァロ、上右マンステール
左下 ル・トルゥ・デュ・クリュ(Le Trou du Cru)、右下 エポワス、
上左 リヴァロ、上右 マンステール

エポワスの250gはすぐに食べきれない、、でも

上の写真左下のル・トルゥ・デュ・クリュは 60g、写真右のエポワスは250g。だからル・トルゥはエポワスの大体4分の1のサイズです。食べきりサイズで買いやすいですし、殺菌乳を使っているのため、アメリカでも販売しているようです。(検索したらアメリカのサイトへのヒットが多かった)

この小さなオレンジ色がはチーズプレートのアクセントにもいいですね。ル・トルゥを買った1週間後にエポワスも買ったのですが、この2つは似て非なるもの、単にサイズだけの違いではなかったです。

エポワスは、熟成具合がちょうど良く、切り口からトロっと中身が流れてくるのですが、ミニチュアの方は弾力があって流れません。ウォッシュチーズの臭い(納豆のような臭い、アンモニア臭、刺激臭)はどちらにもありますが、ル・トルゥの方が臭いが少ない。一番違うのは味で、これはエポワスに軍配が上がります。エポワスは口に入れてしまうと臭いはほとんど感じず、塩味のきいたクリームが舌に絡みついたと思ったら溶けていき、「あ、これはおいしい」もう一口となります。
ナポレオン一世がブルゴーニュのシャンベルタンを飲みながらエポワスを食べるのが好きだったという言い伝えがあり、美食家ブリア・サヴァランはエポワスを「チーズの王様」と称えました。このように名チーズとも言えるエポワスは16世紀ごろにエポワス村に来た修道士が作ったのが始まりだと伝えられています。水(塩水)にブルゴーニュの地酒マールを入れ、濃度を濃くしていきながら、チーズの表面を洗って仕上げるそうです。マールというのは、ぶどうの搾りかすを水で抽出し、発酵、蒸留したブランデーです。

他の地方ではリンゴのお酒シードルやカルバドスで洗ったウォッシュもあるということなので、ウォッシュチーズも種類が多く、未知のことばかりです。これからもコラムを読んでくださる日本、フランスの皆さんと一緒にいろんなチーズを発見していけたらいいですね。皆さんもおいしかったチーズや珍しいチーズに出会ったら、ぜひ教えてください。

品名 ル・トルゥ・デュ・クリュ
原産地 Côte-d’Or ブルゴーニュ地方
大きさ 直径4〜5cm、高さ3cm、60g
脂肪分 50%
熟成期間 不明
タイプ ウォッシュ
原料乳 牛乳(殺菌乳)
品名 エポワスAOP
原産地 ブルゴーニュ地方・シャンパーニュ地方
大きさ 直径9.5〜11.5cm、高さ3〜4.5cm、250〜350g
(700g以上の大きいサイズもある)
脂肪分 50%
熟成期間 最低4週間
タイプ ウォッシュ
原料乳 牛乳(無殺菌乳、殺菌乳)
Epoisses
Epoisses
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。