旅は人生と似て
: UPDATE /身軽な旅
フランス暮らしが長くなり、日本以外のアジアの国々に行く機会がないまま10数年。ところが「チャンスができた、じゃあ」という身軽さで、今年は5月の韓国、6月の日本、9月の中国、11月のインドとアジア旅行が続いています。そこで今回のコラムでは、9月の北京から杭州への旅で気に入った中国の朝食、スーパーで見たチーズ事情や人気の乳製品を紹介したいと思います。

フランスからの輸入チーズが目立つ陳列棚
中国の朝ごはん - 粥と豆腐乳(ドウフルー) -
到着した翌朝から、中国の朝食が大好きになりました。まずはお粥がおいしい。米粥や粟粥、あるいは米と粟を一緒に煮た粥がありました。豆腐に麹をつけて発酵させたキューブ型の豆腐乳(ドウフルー)やザーサイなどの漬物と一緒にいただくことが多いようです。

やさしい味わいの粟粥とお椀の左下は紅麹で作った豆腐乳(ドウフルー)
ねっとりとした食感でしょっぱく、うまみが感じられ、最後にお酒の味が口にひろがる豆腐乳(ドウフルー)や歯触りのよいザーサイと粥の組み合わせがすっかり気に入って、朝食はこればかりいただいていました。パリに帰っても、この朝ごはんを作りたくなり、豆腐乳とザーサイを買ってきたほど!

粥の薬味いろいろ 上段 紅白の豆腐乳
中段 大根あるいは蕪の漬物、ザーサイ
下段 ピーナッツ、きゅうりの漬物、肉でんぶ
茶葉蛋(チャーイエダン)と豆腐脳
お茶で煮たゆで卵があると聞いていたものの、ちゃんとは理解していなかったのが、写真の味付けゆで卵の「茶葉蛋(チャーイエダン)」。ゆで卵の殻にひびをいれて、紅茶、ウーロン茶などの茶葉、醤油、お酒や八角などの香辛料と一緒に煮込んだものです。しっかりお茶と醤油と香辛料の風味が染みたゆで卵、おいしくないわけがありません。それから「豆腐脳」。名前にギョッとしながらも、ツヤツヤ、フルフルのあたたかい豆腐(絹ごしよりやわらか)にきくらげとメンマが入った醤油ベースのタレをかけていただくと、最高でした。

茶葉蛋(チャーイエダン)と豆腐脳
またどこのホテルの朝食でも、せいろから湯気の上がった蒸し物が用意されているのにも感心しました。小ぶりの肉まんや野菜まんもありましたが、私が気に入ったのは、下の写真のような野菜の蒸し物です。山芋、さつまいも、とうもろこしの蒸し物がポピュラーな様子で、どのホテルの朝食でも食べられました。

上 左から温かい豆乳、米粥、茶葉蛋、さつまいも、山芋、とうもろこし、飲むヨーグルト
旅先でスーパーに行くのが好き
旅行に行くとスーパーに立ち寄ることにしています。野外市場はある国とない国がありますが、町の大小を問わずスーパーは必ずあります。どんな野菜や果物が売っているのだろう、みんな何を買うのだろうと思うと、ワクワクしてしまいます。4~5cmほどの小さなりんごやナシ、鞘入りピーナッツのような形の緑のキウイを見て驚き、フロアに山積みの箱入り常温保存牛乳を見て牛乳をよく飲むんだなあ、と思ったり。

ちなみに9月初めということもあって果物がとても豊富でした。桃やすもも、ぶどう、ドラゴンフルーツ、ライチ、龍眼(リュウガン)など。街のあちこちに果物の屋台や、果物店があって、私たちのような旅行者が少量買うこともできました。ミニサイズのりんごやなしは、皮が薄いのでかぶりついて食べることができ、さわやかな酸味や甘さがちょうどよかったです。

チーズはこれから?
チーズとバター売り場は写真のような感じです。フランス産のバターやサンドイッチ用のスライスチーズが目立ちます。プレジドン(Président)のバターが38.90元(約800円)は高い。(フランスでは3ユーロ前後=520円程度)北京や河北省の承徳(チェンデ)、杭州(ハンゾウ)の3都市のスーパーを見た限りでは、それほどチーズは頻繁に食べられていないように伺えました。ワインは生産も消費も増える傾向にあるようですから、今後チーズの消費が増えるかもしれません。

フランスからの輸入バターやチーズが目立つ
ヨーグルトが人気
ホテルの朝食の4枚目の写真にも赤い容器のヨーグルトがありますが、下の写真のような容器に入ったヨーグルトは全部飲むヨーグルトでした。スプーンですくうヨーグルトはカップ入りのものが多いようです。

ストローで飲むヨーグルト
容器のイラストから推測した限りでは、子ども向けの商品、機能性ヨーグルト、フルーツや燕麦入り、などヨーグルトは非常に種類が多かったです。牛乳は、立ち寄ったどのスーパーでも常温保存牛乳のパックの箱が山積みになって売られていました。10年、20年前に比べて牛乳もずいぶん飲むようになっているのですね。

全部ヨーグルト!
旅は人生と似て
私が行ったのは、北京、上海、杭州などの大都市だったので、乳製品の消費が特に多いのでしょう。「百聞は一見にしかず」とは言い得て妙ですね。中国でヨーグルトがこんなに人気があるのは、あるいは野菜や果物が豊富なのはスーパーを見るまで、あるいは食事をするまで知りませんでした。食品に限らず、空港のように巨大で新しい駅も、電動バイクの多さも、北京の厳しい警備も実際に見て、歩いて、経験することで新たな思考が始まっています。正直ほとんど興味がなかった中国の中世から現代史も、この旅をしたことでとっかかりができたようで、もっと知ろうと思いました。知って自分なりの視座を持ちたくなりました。「旅は人生の縮図」と言われますが、新しいことを知って、経験して、それが次の行動につながるという点で旅は人生に似ています。
皆さま、今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
皆さま、今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

万里の長城 慕田峪(ムティアニュ)長城