パリ 春のお出かけ

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日本はこの冬大雪に悩まされたようですが,パリは観測史上初という記録的な暖冬でした。いつもは手放せない帽子も手袋もつけなくてもいいぐらい。冬の間一度も雪が降らなかったのは初めて。いつか寒くなるだろうと思っていたら3月にはもうすっかり春の陽気。暖かすぎてちょっと気持ち悪いぐらいですが、お出かけするには持ってこいのお天気。蚤の市のシーズンの始まりです。

フランス蚤の市事情

古い物を大切にするフランス、蚤の市がとても盛ん。高価なアンティークを扱うお店から家のガラクタを売る人まで種類も様々。日曜日にはほとんどのお店が閉まってしまうフランスでは週末に開催される蚤の市はいつも賑わっています。

実はこれまで全く興味がなかったのですが、お邪魔した知人宅で可愛いお皿を見てからフランスの古い物にハマってしまい・・・色々なところへ足を運ぶうちにこれはフランスの文化だな、と思うに至り・・・今回この蚤の市についてご紹介させていただきたいと思います。

この古物の売り買いをする場を蚤の市と言ったりブロカントと言ったりします。普段はあまり区別せずに使っていますがちょっとだけ説明を。

Marche au puce (マルシェ・オ・ピュス)

まずMarche au puce。
直訳すると蚤の市。パリで蚤の市というとクリニャンクール、モントルイユ、ヴァンヴという3つの大規模蚤の市を思い浮かべます。この3つは毎週末開催されます。

こちらはうちの家から30分ほどで行けるヴァンヴの蚤の市。歩道の両端にお店がずらっとならびます。
小物を扱っているお店が多いのでお値段もお手頃。気軽に楽しめます。

日本人に人気のカフェオレボウルを扱うお店。

この蚤の市は行くと必ず日本人にたくさん会います。自分の友達に会うということもしばしば…。

お店の人曰く、状態のいいカフェオレボウルはもうほとんど日本にあるとか。

こちらは古本のお店。

奥には食事をしたり、カードで暇をつぶすお店のおじさんたちが。

蚤の市ではけっして言い値で買ってはいけません。おじさんたちと値段の交渉をするのも蚤の市の醍醐味です。こっちが言った値段より下げてくれたナゾのおじさんも…。

Brocante(ブロカント)

次にブロカント。
ブロカントというのは「中古のものを扱うお店、またはその中古品」。
100年以上前のものをアンティークというのにたいして、ブロカントは100年以内の古物だということです。
アンティークというと高価な家具や絵画などを思い浮かべますが、ブロカントだと食器や家財道具といった感じです。

ブロカントは週末になると町の広場や通りにマルシェのように開催されます。

週末近所の通りでのブロカント。
1週間ぐらい前から掲げられる黄色い看板が目印です。

こちらは証券取引所前で月一回行われるブロカント。
第一木曜日なので、通勤するサラリーマンを横目に物色。

Foire de Chatou(フォワール・ドゥ・シャトゥ)

今回年に2回パリ郊外で行われる大規模なブロカントへ行ってきました。いつも寒いらしいのですが、今年はポカポカ陽気。

公式サイト:http://www.foiredechatou.com

パリから電車で10分ほど。駅に着くと無料のプチトランがお迎えに来てくれて観光気分。

プチトランに揺られて5分。会場の入り口にはすでに行列が!
こちらは入場料がいるイベントです。

中に入ると広いグラウンドのようなセーヌ川の中洲にキレイに並んだお店がずらり。仮設のテントでできた通りにはなんとそれぞれ名前がついていてさすがフランス!

ガラクタの山の中からお気に入りの物を探すのが楽しみ。
でもこちらは入場料をとるだけあってお値段がちょっと高めでした。

Vide-Grenier(ヴィッド・グルニエ)

そしてVide-Grenier。
直訳すると納屋を空にする。英語で言う、ガレージセールです。こちらは個人が出店しているので多く値段もお値ごろ。ガラクタばかりとうことも多々ありますが…。郊外の町や村では恒例のお祭りとなっているところもあるようです。
Vide-dressing(ヴィッド・ドレッシング)=クローゼットを空にするという意味の洋服や靴を中心に売っているものもあります。

こうやって色々な蚤の市に行って人が不要になった物をお金を出して買っていると、物の価値とはそれぞれが決めるんだな、と実感します。
そして割れたりかけたりすると捨てていた食器ですが、少しぐらいかけていても、揃っていなくてもいいんだ、ということにも気付かされたり。

昔のお皿って手書きで一枚一枚絵が微妙に違ったり、ずれていたり。今だったら不良品です。そしてMade in ChinaではなくMade in France。昔はもっと近くで物が作られていたんですよね。

日本人は物が壊れるとすぐに買い替えますが、フランス人は修理してずっと使うのが得意。それがまた壊れたりしてけっこう面倒なのですが、物を大切にするという価値観はこういうところにも表れているのかも、と思わされます。

私たちが現在住んでいる家は築100年の建物なのですが、フランスでは築年数が経っているからといって建物の価値が下がる訳ではありません。

戦利品の一部。
最近すっかり新しい物を買わなくなりました。

子供には「人が捨てた物を買わないで」と言われますが…。

チーズを使った前菜レシピ

フランス人が古い物を大切にする、というのは食べ物にも共通しています。フランスのチーズはみんな歴史が古く、ローマ時代から作られていたというものもあり、フランス人にとってチーズは歴史に根付いた文化であることを実感します。

今月はそんな歴史あるチーズたちを使ったアントレ(前菜)をご紹介したいと思います。

フランス人はデザートにチーズを食べるのであまり手を加えることをしないのですが、お料理の教室で出てきたレシピはどれも食べやすく、またチーズもクセがなくそのまま食べても美味しい物ばかり。日本で手に入る物でも作れます。

ズッキーニ&シェーブル

茹でたズッキーニの中をくりぬいて、その身とシェーブルチーズ、ヨーグルトを混ぜお好みで塩・こしょう・ミントの葉で味付け。

くりぬいたズッキーニに盛りつけてサラダと一緒にお皿へ。

冷やしていただくこれからの季節にピッタリの一皿です。

以前にもご紹介したとおり、紀元前四千年頃からすでに作られていたというシェーブルチーズ。

今回使うのはシェーブルチーズはクセのない物であればなんでもいいと思います。

こちらはBouyguette des collines(ブイゲット・デ・コリン)というシェーブルチーズ。この変わった形は手で成形しているそう。よく見ると一つ一つ微妙に形が違います。
上に乗っている緑の物は香り付けと飾りのローズマリー。

シェーブル臭さも全くなくとてもフレッシュで食べやすいチーズです。味も薄めなのでお料理に使ったり、ジャムなどと合わせてもよさそう。

参考サイト:http://www.segalafrom.com

名称 Bouyguette des collines
産地 ミディ・ピレネー地方
熟成 2-3週間
重さ・形 150g、楕円
サイズ 長さ20cm、高さ4cm
山羊
タイプ フレッシュ

ズッキーニ&Saint-Marcellin(サン・マルスラン)

ズッキーニを輪切りにして下茹でし、油をぬったココットの底と周りに敷き詰める。真ん中にサン・マルスランを置き、ズッキーニで蓋をしてバジルの葉を散らす。オーブンで8分。ココットから出してサラダとブドウで盛りつけ。

食べると溶けた暖かいチーズと冷たいサラダとブドウの取り合わせがとても新鮮です。

Saint-Marcellin(サン・マルスラン)

ローヌ・アルプ地方で15世紀から作られているこのチーズはとてもクリーミーでいつも小さな入れ物に入って売られています。というのもこのチーズ、熟成するとトロトロになって崩れてしまうのです。

元々は農家で手元にある牛と山羊の乳を混ぜて作っていたそうですが、最近は牛乳のものが多い、という不思議な生い立ちをもつチーズ。

参考サイト:http://www.fromage-saint-marcellin.fr

名称 Saint-marcellin
産地 ローヌ・アルプ地方
熟成 2-6週間
重さ・形 85g、円形
サイズ 長さ7.5cm、高さ2.5cm
牛・山羊
タイプ フレッシュ熟成

Saint-Felicien(サン・フェリシアン)

Saint-Felicien(サン・フェリシアン)

そしてサン・マルスランととても似ているチーズがこちらのSaint-Felicien(サン・フェリシアン)。従兄弟と紹介されています。違いと言えばその大きさ。こちらの方がほぼ2倍の大きさ。また生クリームを足すこともあるためこちらの方がクリーミー。

2つを食べ比べてみると、サン・フェリシアンのほうが熟成が進んでいたようでトロトロ。塩分が強く味もクリームのよう。スプーンですくって食べました。
一方サン・マルスランのほうはまだ少し固め。味はこちらの方がチーズの風味が感じられます。

名称 Saint-Felicien
産地 ローヌ・アルプ地方
熟成 2週間
重さ・形 200g、円形
サイズ 長さ12cm、高さ1cm
タイプ フレッシュ熟成
左:サン・マルスラン、右:サン・フェリシアン

洋梨&Fourme d’Ambert(フルム・ダンベール)

こちらはブリックというアラブの春巻きの皮のようなもの。バターをぬったココットにブリックをひいてその中に小さく切ったチーズと皮をむいた洋梨を入れオーブンで10分。
ココットから取り出して熱々を。

かすかな青カビの香りと洋梨の甘さの、辛×甘が美味しい!

Fourme d’Ambert(フルム・ダンベール)

ローマ時代から作られているというオーベルニュ地方のこのチーズ、青カビが入っているのでキツそうなイメージなのですが、意外や意外、他の青カビチーズと比べるととても食べやすい。口に含むとクリーミーな食感、カビの辛さ、苦み、塩分が感じられます。
円柱状なのでカットしてもらうと円盤形になるのが特徴です。

参考サイト:http://www.fourme-ambert.com
そしてこのチーズとかつてAOCを共有していたという面白いチーズがあったのでご紹介します。

名称 Fourme d’Ambert AOC
産地 オーベルニュ地方
熟成 3ヶ月
重さ・形 1.5kg、円柱
サイズ 長さ12cm、高さ17cm
タイプ 青カビ

Fourme de Montbrison AOC(フルム・ドゥ・モンブリゾン)

フルム・ダンベールとは違う地域で作られていたこのチーズですが、2002年までFourme d’Amber et de Montbrisonという同じAOCを共有していたそうです。

ダンベールの方が皮の部分がグレーなのに対してこちらのモンブリゾンはオレンジ。ダンベールの方が生産量も多く名前が知られているようです。

味のほうですが、今回のかなり進んだ熟成度合いのせいかどうか、口に含んだ途端思い浮かんだのは青カビではなく「納豆」!大豆の発酵した皮の部分の旨味と同じ香りがしてとても面白い発見でした。

ホームページにこのチーズのかけらをサーモンの握りに乗せている写真があったので和食つながりでいけるのかも…勇気のある方は挑戦してみてください!

参考ホームページ:http://www.fourme-de-montbrison.fr

名称 Fourme de Montbrison AOC
産地 ローヌ・アルプ地方
熟成 3ヶ月
重さ・形 1.5kg、円柱
サイズ 長さ12cm、高さ21cm
タイプ 青カビ

最後に

約一年半続いた私のコラムは今回が最後となります。

フランスに住んでいるということでもちろんチーズを食べる機会は日本に比べて多かったのですが、冒険をせず食べ慣れているチーズを選んだり、食べるだけでその生い立ちまで調べることはありませんでした。

このコラムをきっかけに食べたことのないチーズを買ってきたり、旅先でチーズを探したり、逆にチーズを目的に旅先を決めたり、生産者のところへお邪魔して地元のチーズを教えてもらったり。これまでのフランス生活では素通りしてしまっていた世界を発見することができました。

また今回、海の反対側のカリフォルニアのチーズ文化との比較をすることで、よりフランスにとってのチーズとは、ということを考える機会となりました。

私にたくさんの発見をさせてくれたこのコラムが、みなさんにとってもなにか新しいものを発見する手がかりになっていれば、と思います。

最後にこのコラム執筆にあたりアドバイスいただいた関係者の方々に心からのお礼を申し上げます。

みな様によいチーズとの出会いがありますように!
Bonne Degustation!

藤井浩子

夫、息子2人とパリ在住。趣味はミシュランガイド片手に美味しいもの食べ歩き。