パリの日本・再び

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春分を迎え、春夏秋冬の新しいサイクルが始まりました。グレー・ベージュ色のParisのあちらこちらにレンギョウの黄色い花やアーモンドの薄ピンクの花が点描する様に色を添えています。フランスでは春分の日から春が始まると言われていますが、春の始まりに気持ちを新たにして、パリや四季折々のチーズや食べ物に関する話題をお伝えしてゆけたら幸いです。

スプーンですくって食べるタイプの柔らかいゴルゴンゾーラとサン・ネクテール スプーンですくって食べるタイプの柔らかいゴルゴンゾーラとサン・ネクテール

2014年の秋に「パリの日本」と題したコラム*1をこのホームページで書きましたが、今回はその第二弾としてギメ東洋美術館の着物展やフランスで特技を生かして活動している友人のことを紹介します。

*1 「パリの日本」Part Iはこちらからご覧下さい。

柔らかでしっとりした食感のクロンヌ・デュ・タアン 柔らかでしっとりした食感のクロンヌ・デュ・タアン

ギメ東洋美術館の着物展

ヨーロッパ最大の東洋美術館がパリ16区にあるのをご存知でしょうか。館内にはシルクロードと仏教伝播の道に沿って美術品や石像、仏像、絹織物などが展示されています。そのギメ美術館*2で2017年5月22日まで松坂屋が集めた着物コレクション、「Kimono, au bonheur des dames 展」(着物・オ・ボヌール・デ・ダム展)が開催されています。

*2 ギメ東洋美術館

コシノジュンコ「花魁」 コシノジュンコ「花魁」

小袖、振袖、帯やかんざし、浮世絵、屏風だけではなく、着物風ドレスや着物に触発された衣装も展示してあり、こちらも印象に残りました。川久保玲、三宅一生、コシノジュンコ、イヴ・サンローランやジャン=ポール・ゴルチェ等の着物にインスピレーションを受けた衣装を展示の最後に持ってくることで「着物」の近代から現代への繋がりと変革を感じさせる、パリならではの「着物展」でした。写真は着物展のアーティスティック・ディレクターを務めたコシノジュンコの花魁(おいらん)という作品ですが、前に垂らした帯には双龍が刺繍してあるし、髪型も色の組み合わせも中国っぽいですね。ヨーロッパ人のオリエンタリズムをど真ん中からくすぐるデザインで、圧倒されました。着物展の後、美術館の一般展示室で見たハニワの素朴な造形に少しホッとしたり、美しい装束やアクセサリー、結い上げた髪がなんともあでやかな中国の菩薩像を写真に収めたりと、とても楽しい時間です。そう、この美術館は写真撮影禁止とはなっていない様で、あちこちでスマホで撮影する人がいました。美しいものを見たら、誰でも記録したいと思いますよね。そんな大らかなところも昨今珍しい、大変オススメの美術館です。

特技や趣味を仕事にしているパリの友人

友人運というのがあるとすれば、私はかなりの強運の持ち主です。10代から40代半ばの今まで、いろんな才能や特技、趣味を持った友人に恵まれて、インスピレーションや刺激をもらっています。また彼女らと過ごした後は力が湧いて「さあ、頑張ろう」という気になれます。

組み紐

竹中篤子さんは組み紐の教室とアトリエ“Le Soleil Tissant”(「太陽の組み紐職人」という様な意味)をパリ15区で開いています。*3彼女のアトリエに遊びに行くと、ガラス越しに覗き込むフランス人が次々に現れます。組み紐はヨーロッパでも人気があると以前から彼女は言っていたのですが、それは本当でした。映画「君の名は」が大ヒットして以来組み紐の体験をする人が増えたそうですが、パリでも映画をきっかけに興味を持つ人が増えたらいいなあと思います。篤子さんはパリ日本文化会館 Maison de la Culture du Japon *4で、この4月から組み紐体験教室を開催予定です。

お料理

バレッティ辻明美さんは趣味が高じてレセプション料理のケータリングを定期的にしています。食材の質、調味料、献立、器までのこだわりが良い意味で普通じゃない人です。聞けば、繊細な味覚と食材へのこだわりはお父様譲りのものだそう。去る3月上旬に「雛ランチ」と題して昼食に招いてくれました。愛情をかけて丁寧に準備され、プレゼンテーションまでよく考えられたお料理は和食の料理人の知り合いからの評価も高いのです。明美さんはメゾン・和*5という日本の伝統工芸品のショールームに定期的に料理を出しています。

*5 メゾン和8 bis, rue Villedo 75001 Paris

四つ葉のクローバー

二八(にっぱち)と言って、日本では2月と8月は飲食店の客入りが減るそうですが、フランスも当てはまるのではないかと思っています。2月のパリは寒くて買い物に出かける気がおきませんし、8月は日本の様に暑くありませんが、皆休暇中でパリには観光客しかいなくなります。クリスマスの時期お客さんが並んでいたチーズ屋も、並ぶことはありませんし、マルシェのチーズ屋でも見ていると家族で食べる分だけ少量買っていくお客さんばかりです。

さて、写真下のトレッフルは四つ葉のクローバーの形が特徴のシェーブル(山羊のチーズ)です。農家製で10年少し前から作られ始めた新しいチーズです。軽く、すっきりした味わいで、匂いも少なく、ナイフですっと切れる柔らかさです。歴史は新しいものの、今やどこのチーズ店でも扱っている人気チーズになったのは、一つには味がよく、プレートにしても映える「形」で、質が一定しているのだと思います。外見も、中身も良い、しかもしつこくないのに、味がいいと、シェーブル好きの方はもちろん、シェーブルが苦手な方も試していただきたいチーズです。

フランス人は「四つ葉のクローバー」を幸運を招くチャームとして大事にしているのでしょう。この冬、四つ葉のクローバーのチャームがついたブレスレットやキーホルダーなどを人からいただくことが続き、気がつけば「四つ葉」の形のアクセサリーが、これまで持っていたものを合わせると5つか6つはありました。プレゼントをくれた人が「四つ葉」に込めた気持ちがうれしいのです。聞けばトレッフルはお土産用にもよく買われているとのことです。

日本の春は桜ですね。我が家の狭いバルコニーでは花木は楽しめないだろうと思っていましたが、3月の始め、季節外れの暖かい日が半月ほど続いた頃、同じアパルトマンの上階の住人のバルコニーから満開の枝が見えました。風に散った花びらで初めて桜の木があるのに気がついたのですが、なんとも豊かな気持ちにさせてくれました。こちらはテロ事件が後を絶たない不穏な情勢ではありますが、春を謳歌し、生きることを喜びたい。そう思います。入学式や入社式などが行われるこの時期、新しい環境に入られる方やご家族がいらっしゃると思います。皆様の心にも花が咲きます様に願っております。

チーズプレート 左から時計回りにトレッフル・デュ・ペルシュ、モン・ドール、クロミエ・ア・ラ・トリュフ、ボーフォール・ド・シャレ・ダルパージュ チーズプレート
左から時計回りにトレッフル・デュ・ペルシュ、モン・ドール、
クロミエ・ア・ラ・トリュフ、ボーフォール・ド・シャレ・ダルパージュ
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。