フロマジュリーとの別れ、そして出会い

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あてにならない、ことわざ

雷が鳴り、あられまで降っています。
先週フランス語のクラスで聞いた、ことわざを思い出しました。
En avril, ne te découvre pas d’un fil ; en mai fais ce qu’il te plaît.
「4月は一糸たりとも脱ぐな、5月は好きなように」
雨が多く肌寒いこの5月のパリ、「好きなように」装うにはまだ早いです。
インテリアショップ 商店の営業制限の緩和でウインドウ・ショッピングの楽しみも復活

飲食店・商店の再開

夜間外出禁止が21時までに緩和され、レストランやカフェの野外営業が認められました。
屋外のテラス席は連日満員です。(新型コロナウイルスの影響で、日本でも日常生活に制限がかかる状況を承知しておりますが、現在のフランスはこのような様子です。)

これからの季節、庭や部屋の窓を開け放って、アペリティフもすてきです。
一口サイズに切り分けたチーズに、ミックスナッツやドライフルーツを盛れば準備は完了。
くるみを挟んだブリーチーズがあるように、ナッツとチーズは相性が良いのです。

チーズプラトー 数人での気楽なアペロに
左から エポワス、シェーブル、モリテルノ・アル・タルトゥーフォ、ボーフォール 周りにドライブルーベリーやクランベリー、くるみ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツをおいて

チーズのプロの仕事

ブリーやバノンの個性的なカッティング。ドライパパイヤをまぶしたフレッシュチーズを置いて、目を引くテクニック。 ミルク色のチーズに真っ赤なパプリカの粉。砕いた黄色いピスタチオと緑のピスタチオのあしらい。 プラトーの対角線に沿うチーズの配置。
このようなプラトーは家ではなかなかマネができません。
チーズプラトー 右上から時計回りに オッソー・イラティー、ブルー・ド・シェーブル、ドライパパイヤをまぶしたフレッシュチーズ、バノン、ブリー・ド・ムラン、モテ
昨年の9月のコラムで紹介した (http://www.f-r-m.co.jp/cheeseletter/202009/)写真のようなプラトーの演出を取り入れてみたいです。
複数のチーズの周りをナッツやぶどう、パート・ド・フリュイ(Pâtes de fruits=果汁をペクチンで固めたフランスのグミ)で飾ってサーブすれば、テーブルを囲む友人たちから歓声で迎えられます!

名店の店じまい

チーズのプロである熟成士の仕事を思わず熱く語ったのは、近所の気に入りのフロマジュリー(チーズ店)が閉店したからです。
フランス最高職人MOFの称号を持つミシェル・フシュロー氏(Michel Fouchereau)が、セミリタイアに伴いパリ16区の店を閉めました。(ヴェルサイユの店は継続)昨年のクリスマスに買ったのを最後 に、年始めには、ガラスケースや内装はそのままで別の経営に変わっていました。

2、3チーズを買ってみたけれど、なにかが違う。どれを選んでもがっかりすることがない、それぞれのチーズの個性を引き立たせる熟成をしていたミシェルのチーズとは比べようもありません。
「おいしいチーズ選びを手伝います。ご相談ください」という接客も、心地よかったのです。頼りの店が近所になくなってさびしい限りでした。

パリ16区、オートゥイユの歴史的なフロマジュリーを引き継ぐ若い熟成士カップル

別れがあれば出会いがあるとはよく言ったもの、ほどなくして感じのいいフロマジュリーを近所で発見しました。
店の看板に1890年創業とある通り、この建物が建造された19世紀末から130年間、経営者を変えながらも、同じ場所でチーズ店が続いています。
チーズプラトー フロマジェリー・ラ・フォンテーヌ Fromagerie La Fontaine
75 Rue Jean de la Fontaine, 75016 Paris 01 42 88 07 55
火~木曜:9時~13時、16時~20時
金曜・土曜:9時~8時
日曜:9時30分~13時
このオートゥイユの歴史的なフロマジュリーを引き継いだ若いカップルのクララとルシアンは、アンテナを張って希少なチーズを仕入れています。
羊の乳から作られるオッソー・イラティの熟成具合も申し分ありませんので、珍しいチーズだけでなく、お馴染みのチーズも良い物を仕入れて、熟成されています。
40平方メートルのカーヴ(熟成庫)でチーズの多くは熟成されています。
フロマジュリーを取材したエル・ア・ターブル(Elle à Table)のビデオを見つけたので紹介します。(フランス語)
https://www.facebook.com/Elleatable/videos/527076644964696
ウインドウの中のシェーブル 今が旬、ウインドウまるごとシェーブルです!
それほど広くない店内には農家製、生乳のチーズが多く、私自身聞いたことも食べたこともないチーズがいくつもありました。
例えば、今日買い求めたパレ・ド・ラ・クールム(Palet de la Courme)いうシェーブルは見事です!
パレ・ド・ラ・クールム Palet de la Courme パレ・ド・ラ・クールム
南フランスのヴォクリューズ県(Vaucluse)でつくられたこのシェーブルは、切り口からトロリとクリームが溢れます。
山羊のチーズ独特のクセはなく、デリケートなほどやわらかです。若いマチュー・リオ氏(Mathieu Rio)が生産者です。
彼は、ペラルドンAOP(Pélardon AOP)というシェーブルの伝統的な生産地の中心に位置するマ・ド・ラ・クールム(Mas de la Courme)で、放牧する約40頭の山羊の乳から、数種類のシェーブルを作っています。
このような少量生産の農家製のチーズ、しかも熟成が10日程度と短いシェーブルは近隣地域でのみ販売され、消費されるのが普通です。
そんな数少ないチーズをパリで味わえるのは、情熱を持った職人のフロマジュリーがあるからこそ。
店員と会話をして、その日の気分にあうチーズを選ぶ喜びを味わえる、再び応援したい店が増えました!
フロマジェリー・ラ・フォンテーヌのチーズ フロマジェリー・ラ・フォンテーヌのチーズ
左から、シェーブルのフォイユ・ド・リムザン、クルミを挟んだブリー、ブルビのオッソー・イラティ
チーズに限らず、大型店舗や大量生産とは一線を画した、こうした小さな商店や小型の生産者がフランスにはたくさんあります。
そのようなビジネスを敬い、楽しむ消費者がいるからこそ、フランス食品の個性が残ったのだと思います。
愛する人、友人や家族と今を楽しむ彼らの食生活という舞台で、今日も個性のあるチーズやワインという役者が活躍しています!
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。