クロミエから

フランスからの便り 2010~ : UPDATE /

新年が明けて間もなく、フランスに寒波と雪がやってきました。
日中も気温がマイナスの日が続き、降雪に慣れないフランスの各地で、交通がマヒしています。ノエルから新年にかけて楽しい祝い事の続く今は、人々の気分は寒空の下にあっても明るい感じがします。そんなフランスからの便りナンバーワンは、パリ近郊にある、町の名前と同じ名を持つチーズで有名なクロミエ Coulommiers からお届けします。

赤い実で飾られた店の戸口

11月から新年まで、工夫をこらしたクリスマスのウインドウデコレーションが、街を行く人の目を楽しませています。もみの枝、リボン、ヒイラギ、赤い実や小さな電飾飾りが商店の入り口やウインドウを華やかに飾っています。

クリスマスローズの白い花、シクラメンの赤い花、緑の葉のクリスマスカラーで彩られた花屋

クロミエ Coulommiers

今回は、パリ近郊、セーヌ・エ・マルヌ県にあるクロミエの町を歩いてきました。
パリから東に60kmの距離にあるこの町は、クロミエ(Coulommiers)という町と同じ名前を持つチーズで有名です。県名にあるとおりセーヌ川とマルヌ川に挟まれた盆地になっており、すぐそばにパリという一大消費地を抱えるこの地方は、春から夏にかけては小麦やとうもろこしなど、穀物や野菜の畑で見晴らす限りグリーンの大地です。秋には実った穀物で、その大地が藁色に変わります。
都市化の波に洗われた大都市近郊の町というのは、ショッピングセンターや大型スーパーが増えて、昔の面影を残さないところが多いのは、日本もフランスも同じです。クロミエはそこに住まう人々が、テンプル騎士団の館を始め、歴史的建造物を保存し、町の歴史を大事にしています。

クロミエの名前は伝説によると、古代ローマ人がゴール(今のフランス)を征服したとき、「鳩の城」 とクロミエの町を呼んだことから由来すると言われています。ラテン語の鳩Colomboが変化してCoulommiersという名前になったというわけです。

マルシェ Le marche

野外のマルシェでは最大級とクロミエの公式ホームページでも誇らしげに紹介されています。スタンドの数も多く一見の価値があります。クロミエのマルシェも他のマルシェ同様、朝市です。

マルシェのチーズ店

石畳の町の中心は八百屋、花屋、チーズ店、魚屋、肉屋と昔ながらのスタンドで占められています。円心の外へ行くに従い、台所用品、CD、服、時計にジャンクグッズといった出店が多くなってきています。クロミエのマルシェの見所はやはりチーズでしょう。パリではあまり見かけない種類のブリーが多く見られます。

マルシェ

ブリー・ノワー Brie Noir

ブリー地方のマルシェやチーズ店で見かけることのできる超熟ブリーです。昔は熟成が進んでしまったものでも農家で食べていたので、その名残ということでしょうか。黄白色からベージュ、栗色と熟成期間が長くなるにつれて、中身の色も変わります。写真のものは栗色。味見をさせてもらいましたが、水分がなくなって、うまみだけが残っています。地元の人はカフェ・オレのボウルに浸して食べると聞きました。昔は携帯食にもなっていたとも。確かにからからに乾いていて、ポケットに一切れ入れて野良仕事に出かけていたのも容易に想像できますね。

12ヶ月熟成ブリー・ノワーと店員さん

テンプル騎士団の館 La Commanderie des Templiers

ダン・ブラウンのメガヒット小説「ダヴィンチ・コード」ではテンプル騎士団の神秘的なイメージがうまく利用されていました。この小説をきっかけにヨーロッパの歴史、宗教史に興味を持たれた方も多いのでは?
クロミエの町外れの小高い場所に立つ、12世紀に建てられた「テンプル騎士団員の館」はイルドフランス地方に残っているものの中で、もっとも良い状態のひとつだということです。3月から11月はチャペル、司令官の家、鳩小屋、4000平方メートルの中世式庭園など内部が見学できます。

クロミエ テンプル騎士団の館 オフィシャルホームページ

開館時期と時間 (注)2009年の情報です
3月1日から11月30日まで
水曜日から日曜日の午後2時から6時まで、7月と8月 毎日午後2時から7時まで
アクセス
SNCF パリ東駅 Gare de l’Estから クロミエCoulommiers駅まで  所要時間1時間10分
高速道路 A4 出口 Crecy la Chapelle N34でクロミエまで 所要時間1時間
Hôpital/Commanderieの標識に従う
Commanderie des Templiers
Association ATAGRIF
77120 Coulommiers
Tel: 01.64.65.08.61
Email:commanderie.templiers@wanadoo.fr
テンプル騎士団の館

<以下カギカッコ内(紋章含む)日本語版ウィキペディアより抜粋>

「テンプル騎士団(―きしだん)は、中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会。正式名称は「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち(ラテン語:Pauperes commilitones Christi Templique Solomonici)」であり、日本語では「神殿騎士団」や「聖堂騎士団」などとも呼ばれる。

テンプル騎士団の紋章
2人の騎士は清貧の精神および騎士にして修道士という二重性をあらわしている

十字軍活動以降、いくつかの騎士修道会(構成員たちが武器を持って戦闘にも従事するタイプの修道会)が誕生したが、テンプル騎士団はその中でももっとも有名なものである。創設は1096年の第1回十字軍の終了後であり、ヨーロッパ人によって確保されたエルサレムへの巡礼に向かう人々を保護するために設立された。」

出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/テンプル騎士団

カプサン美術館 Le musee des Capucins de Coulommiers

写真ソース http://www.paruvendu.fr

ロングヴィル公爵夫人の城跡の公園敷地内のチャペルが市民美術館になっています。
街の歴史を先史時代から19世紀まで扱い、特に貝の洞窟が有名です。

開館時間
5月から9月 水曜日、金曜日、土曜日、日曜日の午後2時から6時
10月から4月 水曜日、土曜日、日曜日の午後2時から5時半
アクセス
SNCF パリ東駅 Gare de l’Estからクロミエ Coulommiers駅 所要時間1時間10分
高速道路 A4 出口 Crecy la Chapelle D934  所要時間1時間
カプサン市民美術館 クロミエ、カプサン公園内
13 rue du Genéral de Gaule
77120 Coulommiers
Tel:01.64.65.11.31

<カプサン美術館内部、特に貝の洞窟の様子を360℃見ることができるサイト。>(仏語)
http://www.atome77.com/articles/625/Departement-77/Musee-Municipal-Capucins-Coulommiers.htm

<セーヌ・エ・マルヌ観光局サイト> (日本語)
http://www.jp.tourisme77.com

今回はブリ地方とも呼ばれるセーヌ・エ・マルヌ県のクロミエを訪れました。チーズのクロミエはブリーチーズ三兄弟の一人と紹介されることが多いのですが、次回のコラムでは皆に好かれるこの三兄弟、ブリー・ド・モー、ブリー・ド・ムラン、そしてクロミエをブリーにまつわる歴史エピソードも交えながらご紹介したいと思います。

五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。