穏やかな秋の陽に

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東京の仕事関係の人からのメールに雨が多くて暗い空が続くので、早く秋晴れにならないかなと思っているとあった。こんな時、パリと東京の9730キロの距離を実感する。こちらは秋晴れが続き、涼しく過ごしやすい。中秋の名月を眺め、秋分の日と過ごすうちに、秋を暦と眼と肌で感じる。一年でいちばん好きな季節だから、何はなくとも、外に出たくなる。

東に開けたテラスから望む月 東に開けたテラスから望む月

9月の再開

フランスの長い夏休みを経て、先日再会したパリ在住の日本人の友人から、この夏のヴァカンスについて聞かれた。フランスでは、9月に会う人同士の会話がよくヴァカンスの話から始まる。
過去のコラムでも書いたことがあるが、毎年7月から8月にかけて南仏のサントロペという海辺の街で夏を過ごしている。毎夏サントロペだと答えると、彼女から同じ所で毎回過ごすのは飽きないかと聞かれた。街自体は歩いて回れるほど小さいし、新しい店が出来たとか、旧サントロペ憲兵隊署*1が博物館になった等という小さな変化はあっても、街も、海も、レジデンス(ヴァカンス用アパート)のプールも同じ。機会を作って旅行に行き、初めて訪れる街を歩くのは、私も好きだ。しかし夏の長い休暇には、滞在場所も、1日にすることも決まっているというワンパターンは悪くない。おそらく子供たちが成長して、親と一緒にヴァカンスに来なくなるまで続けるのだろう。

*1 ルイ・ド・フュネス主演 フランス映画サントロペの憲兵シリーズの舞台

暑い日中の昼ごはん 暑い日中の昼ごはん
小ぶりのイカと生トマト即席ソース炒め 小ぶりのイカと生トマト即席ソース炒め
クルジェット(ズッキーニ)の花の天ぷら クルジェット(ズッキーニ)の花の天ぷら
ムール貝ワイン蒸し ムール貝ワイン蒸し
タラのタイカレー風 タラのタイカレー風

ヴァカンス中の料理

ヴァカンスの様子を夫が写真を撮ってGoogle+で家族と共有している。ウェブアルバムを見た日本の母から、「あなたはいつもご飯作ってるね」と指摘されたが、このような写真が並んでいるから、まあそう見えるかもしれない。ほぼ毎日、夫がテーブルの料理の写真を撮るし、店を予約して食べに行くよりも、作った方が早い。それでも暑い午後に長い時間キッチンに立つのは嫌だから、大抵簡単なものを用意する。もちろんたまにはレストランに食べに行かないと、疲れて家事ストライキを起こしたくなる。ヨーロッパは南に行くと、野菜や果物の味が濃くておいしいので、生で食べても、下の写真のように季節の果物をタルト生地にのせて焼いてもいい。

桃、アプリコット、Reine Claude(李の一種)、グロゼイユ(赤すぐり)をのせたタルト 桃、アプリコット、Reine Claude(李の一種)、グロゼイユ(赤すぐり)をのせたタルト

桃のタルト

材料:

  • 桃 5~6個(日本の桃は大きいので数は適当に)

<タルト記事>
  • 砂糖 大さじ2
  • バター 125g(サイコロ状に切っておく)
  • 小麦粉 250g
  • シナモンパウダー 少々
  • 卵黄 ひとつ分
  • 塩 ひとつまみ

作り方:

小麦粉にバターを加えて手で混ぜる。砂糖、シナモンパウダー、塩を入れ、卵黄と少量の水を加えて、一つにまとめる。タルト型にバターを塗って生地を押し付けるように敷く。ラップをして冷蔵庫で休ませる。

桃を切ってレモン汁をかける。型に入った生地に桃をのせる。小さく切ったバター(分量外)を数カ所にのせ、さらさらっと砂糖を振ると焼き上がりに色がついてきれい。

予熱したオーブンに入れ、180~190℃で30-40分焼く。

桃のタルト 桃のタルト

バジルの葉がたくさん手に入ったら

ペスト・ジェノベーゼ(ジェノバ風ソース)のパスタ ペスト・ジェノベーゼ(ジェノバ風ソース)のパスタ

ヴァカンス中の料理の話の続きだが、産経新聞ネットでイタリア特派員が書いている「イタリア便り」というコラムを時折読む。そのコラムに今年7月に紹介されたバジルのソースのレシピに惹かれて作ってみた。家族が気に入り何度かリピートしているので、皆さんにも紹介したい。家人はニンニクが穏やかな方が好みなので、ニンニクの量を半分以下にして作る。味の決め手は、パルミジャーノとペコリーノを入れること。ペコリーノが手に入らなければ、パルミジャーノだけでもいいが、ペコリーノが入ると味わいが増す気がする。

材料:

  • バジリコの葉 80g
  • おろしたパルミジャーノ・レッジャーノ 大さじ山盛り7杯
  • おろしたペコリーノ 大さじ山盛り1杯*2
  • 松の実 大さじ山盛り1杯
  • ニンニク 4かけら
  • エキストラ・バージン・オリーブオイル 180ミリリットル
  • 塩 2つまみ

作り方:

これらをミキサーにかければ出来上がり。(すり鉢ですっても)硬めにゆでたパスタに絡めて、おろしたチーズを添えて出す。たくさん作った時は冷凍して、食べる少し前に室内に置いて自然解凍もできた。
*2 イタリアの羊のチーズ。主に中南部の各所で作られている。ジェノバではサルデーニャ島産を使うそう。

たまには女友達と一緒に

今週初め、3人のボランティア仲間を昼に招いた。メンバーは日本人女性で、フランス在住歴20年以上と、私よりも2倍長い時間をパリで生活してきた人達だ。そんな方達にせっかく遊びに来てもらうのだからと、料理もちょっと趣向を変えて準備した。インドカレーペースト、ヨーグルト、ライム汁、干しレーズンでマリネしたラムの肩肉のローストと、半分に切ったトマトに、塩、ほんの少し砂糖、ニンニクのミジン切り、タイム、オリーブオイルをかけてオーブンで30分焼いた付け合わせ、キュウリを切って、ヨーグルトと和え、塩、クミンパウダーをふりかけたライタ風の付け合わせ、インド米を炊いたご飯という組み合わせだ。子羊の肩肉は我が家のある通りにある、ユーゴ・デノワイエ*3のものだから、文句なしに柔らかくおいしい。今回はインド風に味付けしたが、代わりに醤油+蜂蜜を塗ると子供から大人まで楽しめる味になる。ニンニク+香草+塩+コショウ+オリーブオイルをかけて焼いてシンプルに肉の味を生かすのもいい。肉屋で骨を外してあるため、加熱時間が少なくて済む。予熱した240℃のオーブンで30分。今回は加熱温度が高いので、焦げをある程度防ぐのに初めの25分アルミ箔をかぶせて焼いた。

*3 ユーゴ・デノワイエ 日本語HP

9月のチーズプレート

女性同士の「うちご飯」では、チーズを毎回登場させる。ひっきりなしのおしゃべりの邪魔にならず、出す方にも手間がかからず、おいしいの3拍子が揃っている。時間はあっという間に過ぎて、みんな晴れ晴れとした表情になった頃、お開きとなる。

フランス生活の長い人でも食べたことがないだろうというチーズも入れてプレートにした。

写真 左から時計回りに 写真 左から時計回りに

フージュル(Fougerus)写真は4分の1

ブリーの仲間で、クロミエよりやや大ぶり。シダの葉で飾られている。ブリー・ド・モーよりも塩味が主張している。イル=ド=フランス地方のブリーにあるフロマジュリー・ルゼール(Fromagerie Rouzaire)*4の看板商品だ。6年前にF.R.マーケティング(フロメックス・ジャポンと統合)の方々に同行して製造所を見学*4させていただいたことを思い出す。

*4 「ブリーチーズの製造所を訪ねて」
   英語/フランス語

ボーフォール・ダルパージュ(Beaufort d’Alpage)AOP

夏に仕込んだシャレ(山小屋)のチーズはエテ(été)やアルパージュ(Alpage)と呼ばれるが、1500m以上の標高にあるシャレのチーズがアルパージュを名乗れる。味も値段もボーフォールの最高峰!

クー・サンドレ・フェルミエ(Coeur Cendré Fermier)

良い品物を仕入れて、良い熟成士が働くチーズ屋で、フェルミエ(農家製)でレ・クリュ(生乳)のチーズであれば、安心して買える。このハート型のシェーブルも、そんな期待通りのシェーブル。カチッとしていて、かつ穏やかで、一緒に並ぶ目を引くフージュルや個性の強いブルーも引き立てながら、埋没しない。

ブルー・ド・ラクイーユ(Bleu de Laquille)

友人たちの評価が最も高かったのが、このブルー・ド・ラクイーユ。ブルーチーズには牛乳製、羊乳星、山羊乳製のものがあり、これは牛乳製の青カビチーズ。「フロマージュ 上手にチーズを選ぶために」磯川まどか著には、<1850年に、ラクイーユ村の研究熱心なチーズ農家のアントワーヌ・ルースル(Antoine Roussel)さんが、パン・ド・セーグル(ライ麦パン)から作った青カビを混ぜてチーズを作り、これが成功して評判となり、この地域の特産として認められるようになった>とある。夏から秋がおいしいとのことなので、チーズ店で見かけたら試してほしい。西洋梨と一緒に、くるみパンにのせていただいたら、かなりの確率で「うーん 最高♡」となると思う。

秋は日本と同じく、フランスもジロール茸やセップなどのきのこ類、栗、ブドウ、と旬を迎えたおいしい食べ物がいっぱいです。今年は天候不順が続いたそうですが、皆さんが爽やかな秋晴れの下、充実した毎日を送れますように。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

品名 フージュル (Fougerus)
種類 白カビチーズ
産地 イル=ド=フランス地方ブリー
原料 牛乳
重さ 650g
品名 ボーフォール・アルパージュ(Beaufort d’Alpage)
種類 加熱圧搾チーズ
産地 サヴォア地方、ローヌ=アルプ地方
原料 牛乳
重さ 21-70kg
品名 クー・サンドレ・フェルミエ(Coeur Cendré fermier)
種類 シェーブル
原料 山羊乳(無殺菌)
品名 ブルー・ド・ラクイーユ(Bleu de Laquille)
種類 青カビチーズ
産地 オーヴェルニュ地方ラクイーユ
原料 牛乳
重さ 2.3-2.7kg
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。