パリ、アズナブールを想いながら芸術の秋・食欲の秋

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パリ、アズナブールを想いながら芸術の秋・食欲の秋

10月初め、日本でもお馴染みのフランス・シャンソンの黄金時代を代表する巨匠、シャルル・アズナブールが亡くなりました。
94歳で、9月にコンサートで来日されたすぐ後のことでした。

パリ街中のアズナーブルの写真パリの街中にアズナブールの写真が溢れています。

フランス大統領による国の追悼式がアンヴァリッドで開催され、ジャンポール・ベルモンドやサルコジ元大統領とその夫人カルラ・ブルーニなどの著名人を含む2000人の参列者が集まりました。 マクロン大統領はこの偉大なアーティストを絶賛し、「フランスでは、詩人は決して死することない」と追悼の辞を締めくくりました。 歌手、作詞作曲家、俳優など多才であったにアズナブールに対するフランス流の最高のほめ褒め言葉は「詩人(ポエット)」なのだと、つくづくこの国の詩を愛する心が感じとれました。

ラ・コオプ・パリ(La Coop Paris)

そのアズナブールが歌手を目指し始める前、9歳で子役デビューした頃に出演していたと言われる国立オデオン劇場のまん前にあるボーフォルタン酪協同組合の店、ラ・コオプ・パリ(La Coop Paris)を訪ねました。

ラ・コオプ・パリ

有名カフェやお洒落なブティックが並ぶパリの学生街、カルチエ・ラタンにあり、上院議事堂がある美しいリュクサンブール公園からもすぐ近くです。 フランス国内に10店舗あるボーフォルタン酪協同組合のパリ店で、チーズ、肉、加工肉製品、ワイン、ジャム、ハチミツなどサヴォア地方の名産物が販売されています。

ボーフォール・チーズ

さて、フランス人がボーフォルタンと聞いて、すぐに連想するのが、美食家で有名なブリアサヴァランが「グリエールの王子」と称えたボーフォール・チーズです。 このお店では、そのボーフォールを含むサヴォア地方の一級品チーズが購入できるだけでなく、その場で味わうことができるチーズバーもあります。 まず、お店のウィンドー越しに視界に入ってきたのは、大きなマーブル台のチーズカッターの上に並んだボーフォールの塊。通常のボーフォール、草が短い11月にとれた牛乳で作られたノヴァンブル、それから夏に放牧した牛の乳から作られたエテと、3種類が並んでいました。

ボーフォールの塊

ボーフォールの名前は、フランス・サヴォア地方にあるボーフォルタン峡谷に由来されます。 アボンダンスとタリーヌという2種の牛からとれる牛乳限定で山の高地で作られるチーズです。ハードタイプですが、いったん口の中に入れるとさわやかな味とともにとろけるのが特徴です。 毎年11月1日から翌年の5月31日まで作られるボーフォールの中身は象牙色から薄い黄色ですが、6月1日から10月31日までつくられるエテはさらに黄色くなります。 その中には1500メートル以上の高原地で放牧された一群れのみの牛の乳を使って山小屋でつくられた「アルパージュ」という希少なものもあります。

カーヴで味わうチーズバー

お店の一階はショップで、地下のカーヴにチーズバーとチーズ貯蔵庫があります。フランス語のカーヴという言葉は、一般的には地下室を意味しますが、食べ物を保管または熟成させる地下貯蔵庫によく使われます。 ラ・コオプ・パリのカーヴは中世パリの伝統的建物によく見られる典型的なものであり、一面石造りのアーチ型天井が特徴です。 こんな趣のある空間で、見事に並ぶチーズたちを眺めながら生産者から直接とりよせられた逸品を満喫できるのはチーズ・ファンにとって最高の幸せです。

ショップとチーズ貯蔵庫

メニューから、ボーフォールを含む3種、4種、または5種のチーズ・プレートを選ぶことができ、これにサラダとパンがついてきます。本日のおすすめプレートは次の通りでした。

チーズ・プレート 時計回りに右から
ブルー・ド・ボンヌヴァル
ボーフォール
トム・ド・サヴォア
トム・ド・シェーヴル
ルブロション・フェルミエール
くるみをのせたマーシュ(ラムズレタス)が添えてあります。
品名ブルー・ド・ボンヌヴァル
種類青カビタイプ
産地ヴァノアーズ地方オート・モーリエンヌ酪農協同組合、サヴォア地方ランスルブール・モン・スニ
原料乳牛の生乳

品名ボーフォール AOP
種類ハードタイプ
産地ボーフォルタン酪農協同組合(サヴォア地方ボーフォール・シュル・ドロン)
原料乳牛の生乳

品名トム・ド・サヴォア IGP
種類セミハードタイプ
産地サヴォア地方イエンヌ
原料乳牛の生乳

品名トム・ド・シェーヴル AOP
種類シェーブルタイプ
産地サヴォア地方ログネのカーヴで熟成
原料乳山羊の生乳

品名ルブロション・フェルミエール AOP
種類セミハードタイプ、ウォッシュタイプ
産地サヴォア地方
原料乳生乳

ランチ、アペリティブ、または、すぐ前にある国立オデオン劇場での演劇鑑賞後に美味しいチーズを肴に一杯やるのもいいですね。

*1:La Coop Paris (9, rue Corneille, 75006 Paris)
https://www.cooperative-de-beaufort.com

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パリ風、芸術の秋の楽しみ方

アズナブールも歌ったシャンソンの名曲、「枯れ葉」からも察することができるように、フランス人にとって秋はどちらかというと切なく寂しいニュアンスの季節です。 こちらでは芸術の秋といった言い方はしませんが、長い夏のヴァカンスが明けて訪れる秋はアート界の新学期となるせいか、フランスでも豪華な展覧会が集中しています。 毎年10月に開催されるパリ最大の国際現代アートフェアFIACや同じくグランパレで開催のミロ回顧展、ポンピドゥーセンターの安藤忠雄の回顧展「The Challenge」など、今年も内容豊かです。
これらのような大規模な展覧会を見て回れるのがパリの特権ですが、もっと小規模なアートスペースの発掘もパリジャンたちの楽しみの一つです。友人に誘われて、パリ郊外のスシー・アン・ブリーの展覧会のベルニサージュへ行ってきました。 みなさんが仕事を終えた金曜日の夕方にバスティーユ広場に集合し、そこからチャーター・バスでパリの東南約17キロにあるこの町に着きました。哲学者のディデロやグリム兄弟の長兄ヤーコブも訪れた歴史を持ち、お城が多いことでも知られています。
展覧会の会場はスシー城のオランジュリー(オレンジなどの柑橘類の植物を冬の寒さから守ることを目的に建築された建物)で1687年頃に建てられたものです。展覧会の題は「News of the Fake(偽物のニュース)」。 7人のアーティストが、事実とフィクションの曖昧な境界線を探った絵画、立体アート、ビデオなど、とてもインテレクチュアルで興味深い作品が並んでいました。

オランジュリーとNews of the Fake
*2:News of the Fake(10月28日まで) Orangerie du Château (Avenue George Pompidou, 94370 Sucy-en-Brie)
http://www.ville-sucy.fr

フランス語のみ


そしてベルニサージュと言えば、カクテルパーティーがつきものです。チーズ王国フランスでは、美味しいチーズ・プレートがパーティーの質を上げます。もちろんここにもありました!

カクテルパーティーでのチーズ・プレート

アズナブールの曲に「シュル・ラ・ターブル(テーブルの上)」というものがあります。
愛する女性を自分の家に招待した男性が、ご馳走を用意して待つのですが、その人は夜中になっても現れません。愚かに思いながらもお腹がすいたので、彼は一人でご馳走を平らげてしまうのですが、翌日になって、日にちを間違えた彼女が約束した時間に現れます。 でもその頃には、テーブルの上には食べあとしか残っていません。
そこで二人はお腹がすいたのを紛らわすために愛し合うという結末で、ユーモアたっぷりのシャンソンです。 テーブルの上のご馳走の内容とそれらが消えていった風景を描写するのですが、もちろん歌の中でもフランス人らしく、メインディッシュの後のチーズはひとかけも残さず食べられていました。

みなさま、食欲の秋は美味しいチーズとともにボナペティ!

深作 るみ

京都生まれのフリーライター。夫と子供3人でフランス在住。