サルデーニャ島のめぐみ

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大航海時代に伝わったサボテン

サボテンの実を食べたことはありますか。写真の真ん中、ガラスの器に盛った果実はウチワサボテンの実です。中の果肉とタネを一緒に食べるのですが、メロンか干し柿のような味がします。
真ん中が ウチワサボテンの果実
真ん中が ウチワサボテンの果実
ウチワサボテンは、メキシコ、アリゾナ辺りの乾燥した地域が原産地で、15〜16世紀の大航海時代に交易品としてヨーロッパや中東、北アフリカに入ってきたと言います。この果実は、フランス語でフィグ・ド・バルバリー(Figue de Barbarie 野蛮人のいちじく)と呼ばれています。南米アンデス山脈の高地が原産のじゃがいもを、フランス人はポム・ド・テール「地下になるりんご」と名付けましたが、馴染み深い植物をベースに未知の野菜や果物の名前をつけたのですね。

サルデーニャ島の地産地消

サボテンの果実は、パリでも9月のこの時期に売っていますし、夏の休暇を過ごしたサルデーニャ島でもよく見かけました。今回のコラムでは地中海にあるイタリアの島、サルデーニャを紹介します。
 
イタリアではシチリア島についで二番目に大きな島で、日本の四国よりも面積の大きなサルデーニャ島。チーズ、バター、牛乳などの乳製品をはじめ、農産・畜産物を、地産地消を意味する「キロ・メトロ・ゼロ」(Km Zero)を掲げるお店やアグリツーリズモ*が目立ちました。
 
*アグリツーリズモ 地元の肉や野菜を使い、郷土料理を出すレストランと宿泊施設
サルデーニャ東部、ヨーロッパ最大の峡谷Goroppu峡谷 おおい被さる崖を見上げながら、白い岩が連なる地面を進みます
サルデーニャ東部、ヨーロッパ最大の峡谷Goroppu峡谷
おおい被さる崖を見上げながら、白い岩が連なる地面を進みます
物流や冷蔵・冷凍技術が今のように発達していなかった数十年前まで、当たり前だった地産地消の食生活に現在、意識や関心が向いています。伝統的な方法で、塩をして熟成、乾燥させた島のチーズやハムが、地元の人たちに愛されているのを、買い出しのたびに感じました。
イタリア語でボッタルガと呼ばれる地元の名産カラスミを絡めたカニのスパゲッティ
イタリア語でボッタルガと呼ばれる地元の名産カラスミを絡めたカニのスパゲッティ

ペコリーノ・サルド

そんな休暇中のある日、山の麓を車で移動中に移動する羊の群れに出くわしました。きっとチーズになるお乳を出す羊です。群れが歩くスピードや方向を導く牧羊犬たちの働きに見惚れ、羊が首につける鈴のカランコロンという澄んだ音とともに思い出に残りました。
 
ペコリーノ・サルド*はDOP(原産地保護呼称=denominazione di origine protetta)のついたチーズです。ローマ近郊で作られたものはロマーノ、サルデーニャ島ならサルドと地名が名前についています。現在はペコリーノ・ロマーノもそのほとんどがサルデーニャ島で製造され、ペコリーノ・サルドと同様にサルデーニャ島を代表するチーズです。
 
*ペコリーノ・サルド
イタリア語でメス羊を意味する “pecora “と「サルデーニャの」を意味する”sardo”が名前の由来。サルデーニャ島で、干し草や牧草を食べる羊の生乳から作られています。
2頭の牧羊犬が羊の群れを誘導していました
2頭の牧羊犬が羊の群れを誘導していました
重陽の節句にダリアを飾って 左 ペコリーノ・サルド 真ん中 シェーブル、奥 グリュイエール
重陽の節句にダリアを飾って
左 ペコリーノ・サルド 真ん中 シェーブル、奥 グリュイエール

そのままでも、すりおろしても

半年以上から一年ほど熟成されたこのハードチーズは、一口に切ってそのまま食べても、すりおろしてパスタにかけても、とてもおいしいです。中は白く、塩味はくっきりとあり、爽やかな旨みがあります。コラムを掲載中のエフアールマーケティング社は、ペコリーノ・ロマーノの特徴を気軽に楽しめるパウダー状の「芳醇ペコリーノ」を製造・販売しています*。特にペコリーノなどのハードチーズはグルタミン酸が豊富なので、刻んだり、すりおろしたり、パウダーにすることで調味料の一つとして食事に取り入れられます。
 
*ドンウマッジオ 芳醇ペコリーノ
https://www.f-r-m.co.jp/donumaggio/

チーズで食事

夏の疲れが体に残ると感じる今は、意識してハードチーズを少し食べています。チーズと、家にある野菜のスティックかサラダ、あるいは温野菜という食事もあり!と提案したいです。バゲットをトーストして、温めたシェーブルとはちみつをのせたものは次女の好みで、朝食に自分で用意して食べています。ビタミンCと繊維以外の栄養素を含み「準完全栄養食」と言われるチーズ。自分の好みのチーズを見つけることが最初の一歩でしょうか。

島の自然はカレイドスコープ

紀元前1600年頃~紀元前500年頃に大きな石を積み上げた巨石建造物「ヌラーゲ」を約7000も島に残した古代サルデーニャ人。その時代から、この島はさまざまな民族や国の支配を受けながらも、今日まで独自の文化を積み重ねています。
Olbia空港から程近いヌラーゲRIU
Olbia空港から程近いヌラーゲRIU
地中海でも屈指の透明な海、切り立つ崖や洞窟と、島はまるでカレイドスコープ(万華鏡)のようでした。
時々、自然のなかで五感と直感を働かせる時間が欲しくなります。謎を残す巨石文明も峡谷も数多い洞窟も、百聞は一見にしかず。サルデーニャ島で、木漏れ日の差す森を歩き、岩に触れて、山上や湖面を吹く風に頬をなでられる旅に出かけませんか。
白い砂で透明度の高い海 / カヤックや散策を楽しめる川の源泉 Sorgente Su Gologone / 島に数ある洞窟
白い砂で透明度の高い海 / カヤックや散策を楽しめる川の源泉 Sorgente Su Gologone / 島に数ある洞窟
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。